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【書評】『腎硬化症の早期診断と治療』腎硬化症を俯瞰できる、時宜を得た書

No.4978 (2019年09月21日発行) P.66

松尾清一 (名古屋大学総長、元日本腎臓学会理事長)

登録日: 2019-09-18

最終更新日: 2019-09-17

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今なぜ腎硬化症か?この疾患の重要性は、以下の理由から理解できると思う。すなわち、①腎硬化症は、臨床的にみれば「静かに、かつ持続的に」腎臓の機能を低下させる疾患で、尿蛋白はないかあってもわずかで、その他の尿異常や自覚症状も出ないので、注意していないと気づかないうちに進行してしまう恐れがある。②世界中で腎代替療法(透析や移植)を受ける患者の数は着実に増えているが、その中で腎硬化症が原因であるものの割合はどんどん増えており、わが国を含め世界中で同じ傾向がある。③腎硬化症の原因は高血圧などによる動脈硬化性の血管病変を基盤にしたものとされているが、まだまだ腎機能低下が進行する仕組みは明らかにされていない、ということである。

かつては原因不明の腎機能障害を腎硬化症としてごみ箱的に分類していたこともあり、この疾患に対する注目度ははっきり言って大変低かった。しかし、本書の編集を行った和田隆志教授、湯澤由紀夫教授らをはじめ、日本腎臓学会や関連学会、そして多くの研究者や腎臓専門医の努力により、腎硬化症の疾患概念と分類、病態生理、病理像、早期診断と臨床経過、治療、統計数値全般などの事項が徐々に明らかにされてきた。現代は「人生100年時代」という言葉で表現されるような長寿社会に突入しているが、この中では腎硬化症のような疾患は「サイレント・キラー」として、ますます重要になるものと思われる。したがって、本疾患への注目度は今後格段に高まるものと考えている。

本書はこれまでの研究成果を包括的にわかりやすく解説し、腎硬化症を俯瞰できる書となっている。またわが国の腎硬化症の豊富なデータをもとにして書かれたものだということも重要である。まさに時宜を得た一冊ということで、腎疾患診療に携わる関係者に広くお読み頂き、またデータも活用頂きたい。

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