本書は,地域で開業した医師が医療機関を継続していくためのノウハウが詰め込まれた,まさに医療機関経営のための指南書とも言える一冊となっている。
いざ開業しようとした場合,医師にとって資金の問題が大きな課題となるが,それと同じくらいに,「開業するためにこれまでの勤務先をどうしたら円満に辞めることができるか」「優秀なスタッフに長く勤務してもらうにはどうしたらよいか」など,人事・労務の問題は医療機関経営にとって大きな問題となる。本書には,これまでに2000件以上の医療機関からの相談に応じてきた経験を踏まえたアドバイスが示されており,大変参考になる。
その内容は全5章からなっている。「第1章 開業前に必ず押さえておきたい重要ポイント」では,開業に備えて勤務先を円満に退職する重要ポイントや,開業前に知っておきたい労務の基礎知識について解説。「第2章 問題スタッフではなく,長く働いてくれて戦力になるスタッフを採用できるコツ」では,末永く働いてくれるオープニングスタッフの採用のコツが紹介されている。
また,「第3章 開業後に失敗しないオープニングスタッフ採用から開業日までの準備事項」では,主にオープニングスタッフ採用後から実際に開業するまでに行うべきことを重点的にまとめ,「第4章 問題スタッフ,相次ぐ退職,残業代や賞与の請求……スタッフとのトラブル対処法と予防策」では,開業直後の医療機関に起きやすい退職や問題のあるスタッフとのトラブルの予防策や対処法が述べられている。
そして,最後の「第5章 開業直後から大きな成果を出す組織をつくるスタッフマネジメント」では,医療機関の組織力を強化するためのスタッフマネジメントの仕方が詳しく説明されるなど,全体を通じて読みやすい内容となっている。
昨今の物価高騰などにより,医療機関は現在,厳しい経営状況となっているが,開業を志す医師には本書などを参考に開業し,私どもと一緒に地域に寄り添った医療を実践して頂ければ幸いである。