腎硬化症の早期診断と治療【電子版付】
第一線の専門家が集結し、最新知見を解説!
目次
1. 腎硬化症の疫学と現状
2. 腎硬化症の診断
3. 高齢社会における腎硬化症の臨床レジストリー
4. 腎硬化症の分子機序
5. 腎硬化症の血管病変
6. 腎硬化症腎生検データベース
7. 腎硬化症と肥満関連腎症
8. 尿酸と腎硬化症
9. 糖尿病性腎症と腎硬化症
10. 良性・悪性腎硬化症
11. 腎硬化症と治療
12. 透析導入の判断と維持
13. 腎硬化症患者の腎移植
序文
わが国は超高齢社会となり、動脈硬化、血管病変を背景とする腎硬化症の臨床上の重要性が年々増してきています。実際、新規に透析に導入される原疾患としては、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎についで多く、その数はさらに増加しています。したがって、腎硬化症の理解とその対策は重要な課題です。さらに、超高齢社会を迎えている国々の共通の課題でもあり、高齢化が先んじているわが国からの情報発信はとても貴重であると思います。
腎硬化症は、血管病変を背景とするその成り立ちから、種々の腎臓病の病態に影響を与えていることが考えられます。一方で、その診断や治療法などは、 いまだ十分に論じられていないのが現状です。高血圧性腎硬化症に関する病理診断については、その病理所見の定義を含めて議論されてきました。さらに、高血圧性腎硬化症のレジストリーも立ち上がり、その臨床病態の解明と治療や予後改善への示唆に富む結果も出てきています。こういった腎硬化症の超高齢社会での変遷や、それに対応する病態解明、臨床疫学の基盤が構築されつつある中で、なおいっそう、最新の知見に基づく包括的な理解と臨床への応用が求められています。これらの国内外における知の集積とその利活用により、解明がいっそう進むとともに予後の改善が得られることを強く祈念しております。
本書では、このような背景のもとで腎硬化症の研究、診療で八面六臂のご活躍をされている先生方に最新の知見をまとめて頂きました。これまで、腎硬化症の早期診断から透析や腎移植に至る治療まで、総合的に論じた成書は比較的少ないのではないかと思います。
まさに時宜を得たものであると思います。この包括的な1冊を通じて、腎硬化症に関するいっそうの議論と理解への一助となりましたら、編集、執筆に携わってきた者として大変うれしく、そしてありがたく存じます。どうぞご活用頂き、忌憚のない建設的なご意見をうかがえれば幸甚です。
2018年12月
和田隆志
湯澤由紀夫
レビュー
松尾清一(名古屋大学総長、元日本腎臓学会理事長)
腎硬化症を俯瞰できる、時宜を得た書
今なぜ腎硬化症か?この疾患の重要性は、以下の理由から理解できると思う。すなわち、①腎硬化症は、臨床的にみれば「静かに、かつ持続的に」腎臓の機能を低下させる疾患で、尿蛋白はないかあってもわずかで、その他の尿異常や自覚症状も出ないので、注意していないと気づかないうちに進行してしまう恐れがある。②世界中で腎代替療法(透析や移植)を受ける患者の数は着実に増えているが、その中で腎硬化症が原因であるものの割合はどんどん増えており、わが国を含め世界中で同じ傾向がある。③腎硬化症の原因は高血圧などによる動脈硬化性の血管病変を基盤にしたものとされているが、まだまだ腎機能低下が進行する仕組みは明らかにされていない、ということである。 かつては原因不明の腎機能障害を腎硬化症としてごみ箱的に分類していたこともあり、この疾患に対する注目度ははっきり言って大変低かった。しかし、本書の編集を行った和田隆志教授、湯澤由紀夫教授らをはじめ、日本腎臓学会や関連学会、そして多くの研究者や腎臓専門医の努力により、腎硬化症の疾患概念と分類、病態生理、病理像、早期診断と臨床経過、治療、統計数値全般などの事項が徐々に明らかにされてきた。現代は「人生100年時代」という言葉で表現されるような長寿社会に突入しているが、この中では腎硬化症のような疾患は「サイレント・キラー」として、ますます重要になるものと思われる。したがって、本疾患への注目度は今後格段に高まるものと考えている。 本書はこれまでの研究成果を包括的にわかりやすく解説し、腎硬化症を俯瞰できる書となっている。またわが国の腎硬化症の豊富なデータをもとにして書かれたものだということも重要である。まさに時宜を得た一冊ということで、腎疾患診療に携わる関係者に広くお読み頂き、またデータも活用頂きたい。