現在,日本ならびに欧米では心不全患者が激増しており,この状態は「心不全パンデミック」と称されています。心不全パンデミックには,心不全患者数の増加だけではなく,心不全入院患者数の増加,心不全死者数の増加,心不全に関する医療費の増加など,様々な心不全に関する問題点が含まれています。心不全の診療において心エコーは最も重要な診断的検査です。心エコーにより,心機能の評価,血行動態評価,原因疾患の診断と重症度評価が可能です。
一方で,近年,肺エコーは心不全の診療において有用であることが報告されています。簡便で有用な手法であるにもかかわらず,残念ながら日常臨床で広く周知された手法ではないのが現状です。その原因としては,比較的新しい評価法であるため肺エコーのよい指南書がない,肺エコーを教えてくれる人がいない,などが挙げられると思います。肺エコーだけで心不全診療を行うことは不可能であり,心エコーをベースに肺エコーを絡めた心不全診療を行うことが,よりよい心不全診療につながります。本書は,心不全管理における肺エコーの重要性に焦点を当て,いかに日常診療で心エコーと絡めた「心×肺エコー」が重要であるかを概説した初めての書籍です。
本書を執筆された今西純一先生は,内科専攻医終了後の2011年から2014年までの3年間,私が主宰している神戸大学循環器内科の心不全グループに所属されていました。心不全グループでは心エコーを用いた日常臨床ならびに臨床研究を行っているのですが,今西先生は日常臨床のみならず臨床研究にも精力的に取り組んでおられました。さらに,多くの国内外の学会で研究成果を発表され,在籍中には3編の英語の研究論文を完成させ,海外の一流雑誌に掲載されています。私は50名以上の医師を心不全グループで指導して参りましたが,今西先生は記憶に残る1人です。先生が神戸大学を離れた後も付き合いは続いており,淡路医療センターでも変わらず精力的に活動されて,私もうれしい限りです。
本書は図表が多くて読みやすく,また多くの症例も提示されているので「心×肺エコー」の有用性が非常によくわかります。間違いなく今後の心不全診療における指南書となる一冊であり,私が胸を張ってお勧めできます‼