【東京大会の理学療法サービス提供に向けて,過去の競技大会の活動状況を理解する】
オリンピック・パラリンピック競技大会における理学療法サービス提供は,国際オリンピック委員会により義務づけられ,選手村や競技会場に医療施設Polyclinic(ポリクリニック)として開設される。アスリートだけでなく役員関係者すべてに理学療法サービスが提供される。
過去のロンドン大会(2012年)のポリクリニックにおける疾患別の理学療法サービス提供の上位割合は,アスリートで,筋肉の傷害33.3%,関節傷害24.8%,腱傷害12.8%,アスリート以外で,関節傷害30.1%,筋肉の傷害24.4%,腱傷害8.2%と外傷疾患が主である。参加全アスリート1万568人中1778人がサービスを受け,理学療法サービスに従事した理学療法士は480人であったと報告されている1)。
理学療法士の参加資格要件は複数ある。5年以上の実務経験あり,スポーツ現場での実績あり,大学院修士号の保有が望ましい,外傷対応に関する認定証を有する,などが挙げられる2)。また,ロンドン大会では,国内法により医師の処方なしで理学療法サービスを理学療法士が提供できるダイレクトアクセスにより行われたが,わが国では医師の処方が必要であり,異なる理学療法サービス体系を構築する必要がある。日本理学療法士協会だけでなく,スポーツ医療にかかわる医師の参加は必須であり,積極的な事業参加が望まれる。
【文献】
1) Grant ME, et al:Br J Sports Med. 2014;48(1): 63-70.
2) Phillips N, et al:Br J Sports Med. 2015;49(5): 312-7.
【解説】
永野靖典 高知大学医学部附属病院リハビリテーション部