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PC接続型心電計を活用して適切な初期診断を目指したい[トップランナーが信頼する最新医療機器〈在宅医療編〉(4)]

No.4917 (2018年07月21日発行) P.14

登録日: 2018-07-24

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医療機器の進化で1つの潮流となっているのが、手持ちのデジタル機器と連動できる製品ラインアップの充実だ。従来型の医療機器は専用の画面がついており、高機能な半面、スペースを取る上に高価で、一般の診療所にとっては導入のハードルとなっていた。本シリーズ第4回は、ノートパソコン接続型心電計を活用する診療所の事例を紹介し、今後の在宅医療や高齢者医療のあり方について考えてみたい。【毎月第3週号に掲載】

首都圏で在宅診療専門クリニックを11カ所展開する医療法人社団悠翔会の在宅クリニック渋谷の山田純也院長が、日々の訪問診療や往診で活用しているの は、ノートパソコンやアンドロイドOSのタブレットなど手持ちのデジタル機器との接続で標準12誘導解析機能付となるタイプの心電計だ。

急性冠症候群には現場の心電図所見が重要

在宅医療を受けているのは主に高齢者で、目立った自覚症状がなくても不整脈や狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こす患者が一定数存在する。過去に心イベントを発症した経験を持つ患者も少なくないため、診断や鑑別、経過観察において、その場で心電図を計測できる携帯型の心電計が果たす役割は大きい。

「例えば急性冠症候群が疑われる場合には自覚症状、心電図、心筋マーカーの3つの指標を基に初期診断を行いますが、在宅の現場で特に重要になるのは、心電図です。ポイントはSTの上昇と低下、陰性T波や異状Q波などです。心筋梗塞であればST上昇型かそれとも非ST上昇型か、狭心症なら不安定狭心症か安定狭心症かといったリスクの度合いなどを鑑別し、心エコーの所見も踏まえ必要ならば病院に搬送します」(山田さん)

心筋梗塞では、目安として発症から6時間以内に冠動脈を再灌流させることができれば、心筋の壊死範囲を最小限に抑えられるとされる。心電図による適切な初期診断と治療の早期開始が、予後の改善に大きな影響を与えるため、山田さんは常にこのノートパソコン心電計を携帯して訪問診療に出向いている。

ケーブルが絡みにくい心電計

山田さんが導入しているのは、三栄メディシスの「ECG Explorer500X1」(https://www.pc-ecg.com/1306/500x1/)。最大の特徴は手持ちのパソコンやタブレットに接続するだけで標準12誘導解析機能付心電計になる点。本体部分がほとんどなく、コンパクトなので持ち運びがしやすい(写真)。パソコンやタブレットを活用するタイプのため、導入コストを抑えることもできる。また電子カルテとの連携が可能で、ネットワーク上でのデータ管理(図1)やレ ポート出力なども容易だ。出力に高価な感熱紙を使用する必要はなく、通常のコピー用紙に印刷ができることからランニングコストも安い。ECG Explorerにはこのほか、ワイヤレスタイプの500X2という製品もラインナップされている。



ECG Explorer500X1を選んだ理由について山田さんは「ノートパソコンに接続できるタイプを探していたところECG Explorer500X1に辿り着きました。必要ならプリントアウトも可能ですが、パソコンの画面で結果を見られる点は大きなメリットだと感じています。またケーブルの取り回しが良く、とにかく使いやすい。通常の心電計の胸部誘導は1本のケーブルから6本に分かれていてすぐに絡まってしまうのですが、この心電計はケーブルが一列にならんでいるので絡みにくく(図2)、救急車やドクターヘリで採用されている理由が実感できます。在宅での使い勝手が良いのはもちろんですが、診療所のベッドサイドでも活用できると思います」と語る。



心電計につきもののノイズについては、「本体があまりに小さいので使う前は心配していましたが、据え置き型とまったく遜色なく、安心して使えます」と特に問題にはしていない。ただ高齢者は皮膚が乾燥してノイズが入りやすいため、四肢誘導のクリップにアルコール綿を挟むなど工夫して計測を行っているという。

在宅医に求められる役割は変化していく

高齢化の急速な進展に伴い、在宅医療の重要性が叫ばれて久しいが、徐々に在宅が担う役割には変化が求められている。都市部も深刻な高齢化が目前に迫っており、山田さんは自らの経験を基に「不整脈や虚血性心疾患といったこれまで病院に任せていた患者さんについても、一定程度は在宅で引き受ける必要が出てくると思います」と指摘する。

山田さんが経験したのは90代の男性患者のケースだ。心筋梗塞で入院したが、症状が安定したのでその日のうちに「自宅に帰してあげたい」と患者の家族から山田さんに要請があったという。本人はせん妄があり暴れるので、入院しているとベッドで拘束されてしまう。その姿を目の当たりにした家族は「もう高齢なので何かトラブルがあっても受け入れます」との覚悟を持っていたため、山田さんは希望に応え、在宅で診療することにした。

「今後はこの患者さんのケースのように急性期でも、症状が安定していて、医学的に妥当であれば在宅で医療を受けたい、受けさせたいと希望する人が増えていくと思います。私がこの患者さんを引き受けても大丈夫と判断した理由の1つがこの心電計の存在です。必要であれば何度も繰り返し心電図検査ができるので、不安はありませんでした。技術の進歩によって医療機器は日々高機能化しています。こうした機器を活用して質の高い医療を提供していくことは、今後の在宅医に求められる役割を果たしていく上で、ますます重要になっていくと考えています」

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