子どものホスピスケア(緩和ケア)は,悪性腫瘍のみならず重度の身体障害,神経難病など多種の疾患を有する患児を対象とする。そしてそれらは共通する課題を多く抱えている。本稿では,小児がんを中心に幅広い疾患の患児に対する家族のケアについて述べたい。なお,小児がんの在宅医療一般,および緩和ケア全般に関しては別稿を参照されたい。
小児がん患者の在宅ケア・緩和ケアにおいては,特に配慮すべき問題がいくつかある。
①疾患の種類は多いが患者数は少なく,治療経験の蓄積が少ないため,関係者(医療,教育など)の間で経験や知識が共有されにくい。その結果,家族にとっては相談先がわかりにくい(各地の拠点病院に相談室が設けられているが,小児がんに関してはまだ少ない)。
②意思決定の困難さがある。これは,意思決定の主体が子ども本人か,親か,という問題と,意思決定支援の難しさがある。
③子どもは成長する。子どもは親,きょうだい,友だちなどと交流しながら学び,成長していく。小児がんという困難な状況に置かれた子どもはより深く成長する。
④病院と在宅それぞれの役割が異なり,協力が必要だが,難しい面もある。成人の緩和ケアと比べて,病院の役割が大きい。
⑤小児がんは進行が速いが,化学療法や放射線治療などにより生存率が高まっている(7割以上)。それに伴って後遺症(障害)とともに生きる期間が長くなり,ケアの継続が必要になっている。
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