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(3)関連ガイドラインと睡眠薬の休薬法[特集:高齢者に対する睡眠薬の正しい使い方]

No.4916 (2018年07月14日発行) P.40

田端宏充 (大阪回生病院睡眠医療センター)

登録日: 2018-07-16

最終更新日: 2018-07-11

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睡眠薬を開始する前に,正確な病状把握,治療の要否判定,睡眠衛生指導,長期服用となるリスクの検討などを行う

不眠症状とQOL障害が改善している場合には,速やかに睡眠薬は減薬・休薬する

睡眠薬の減薬・休薬は週単位の速度でゆっくりと行う

1. わが国および欧米の不眠のガイドラインのアウトライン

不眠症は日常診療の中で頻繁に遭遇する睡眠障害である。安易で漫然とした睡眠薬の投与は,しばしば依存症や日中の眠気の増大などの問題を引き起こす。したがって,ガイドラインに沿った睡眠薬の処方・休薬が望ましいが,必ずしもすべての医師がガイドラインに目を通したことがあるというわけではないのが現状ではないだろうか。ここでは,日常診療の一助として頂くため,わが国および欧米の不眠症のガイドラインについてそのエッセンスを概説する。

1 わが国のガイドライン

まず,わが国の「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」(三島和夫 編)1)で示されている不眠症の治療アルゴリズムの概略を図1に示す。ポイントとしては,薬物療法を開始する前に,①症状把握,②治療の要否判定,③睡眠衛生指導,④リスク評価のステップを踏むことである。睡眠衛生のための指導内容としては,定期的な運動を行うこと,寝室環境を整えること,規則正しい食生活を保つこと,就寝前の水分・カフェイン・飲酒・喫煙などを控えること,寝床での考えごとを避けることなどが挙げられる。また,リスク評価では,睡眠薬の長期服用に陥りやすいか否かについて事前に評価を行う。重度の不眠,抗不安薬の服用,高齢,合併症の存在,ストレスの存在,薬物依存の履歴,アルコールとの併用,性格特性(受動的・依存的・慢性不安・心気的)などの有無を確認し,必要に応じて,専門診療科との連携を考慮する。

薬物療法を開始した後も漫然と長期継続を行わず,適宜不眠の再評価を行い,必要に応じて不眠症のための認知行動療法(cognitive behavioral therapy for insomnia:CBT-I)を併用したり,適切な時期に休薬トライアルを行うことが重要である。薬物治療が無効または部分寛解のときに推奨となっているCBT-Iは,慢性不眠に対する有効な治療法であり,後に示すように特に海外では推奨度が高い。しかし,わが国では保険適用外の治療であり,また十分にCBT-Iを行える施設も限られるため,ここでは説明のための誌面をとらないこととする。なお,CBT-Iの一技法である睡眠スケジュール法に関しては,ガイドラインQ30に解説があるため,必要に応じて参照されたい。

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