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宇田川玄真(2)[連載小説「群星光芒」114]

No.4685 (2014年02月08日発行) P.72

篠田達明

登録日: 2014-02-08

最終更新日: 2017-09-21

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  • 天明3(1783)年、玄随が26歳のとき友人の蘭方医曽昌啓の伝手で桂川邸の寄り合いに出席した。ここで桂川甫周と大槻玄沢と知り合い、雑談を交わしたのだが、そのうちに昌啓をまじえた4人で「漢方と蘭方、いずれが優るか」と口論になった。

    蘭方はいたずらに新奇を衒い、真の医学は漢方以外にないと信じる玄随は『素問』や『霊枢』をもとに漢方の優位を主張した。腑分けについても、「病は刻々と変化して限りがない。腑分けは死して動かぬ臓物を見るにとどまる。たとえ剖検したとて生前の病の変化はつかめぬ。かえって死者への冒瀆ではないか」と批判した。

    玄沢はおだやかに反論した。
    「漢方では秘法を他に明かさぬ傾向があります。蘭方では剖検所見をひとり占めにせず、すべて公開して皆で検討するので医療の進歩につながります。不幸にして病死した遺体も己れの死因を無言のうちに告げています。それをあまねく世に知らせるのは医師の務めではないでしょうか」

    諄々と説く玄沢の話に玄随は色白の頰を紅くして耳を傾けた。

    「漢方医は病人の回りに屏風をめぐらし病室の窓や戸を閉じさせますが、この風習は室内を濁すので戸を開けて清風を入れるべきです。漢方ではしばしば病人の飲食を減じますが、これも生気を損なう因なので食をおぎない体力をつけさせるのがよいでしょう。漢方医も薬方の知識のみならず、日頃の養生法に加えて衣食住に関する知識をとり入れてはいかがですか」

    玄随は3人を相手に孤軍奮闘したが、『解体新書』を拠り所にオランダ医学の卓越性を説く玄沢や甫周を論破するのは難しかった。

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