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【書評】正しいリンパ浮腫の診断・治療

No.4866 (2017年07月29日発行) P.78

光嶋 勲 (広島大学病院国際リンパ浮腫治療センター所長/東大名誉教授)

登録日: 2017-07-31

最終更新日: 2017-07-25

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著者の廣田彰男先生は、27年前に私がリンパ浮腫の外科的治療を開始し、日本リンパ学会で発表しはじめたときから既にリンパ浮腫の複合的理学療法を行い、その啓蒙のために頑張っていらっしゃった。いわば、リンパ浮腫治療のカリスマ的存在である。40年余りで1万人以上のリンパ浮腫患者を診察・治療された先生の集大成が本書であり、一般的なリンパ浮腫治療の内容とは異なって、実践面での重要点が数多く記載されている。また、リンパ浮腫治療の将来を見据えて、現時点における重要な問題点も指摘している。

本書に記載されているリンパ浮腫の臨床診断と治療は、リンパ浮腫の専門医をめざす医師やコメディカルが必ずマスターしなければならない基本中の基本である。

本書はリンパ浮腫の基礎から臨床診断・治療という構成であり、第2章の「リンパ系の解剖と生理」では、リンパ浮腫を専門とする者にとって重要かつ必須とされる最新の基礎知識が紹介されている。また、第4章の「リンパ浮腫の治療」は詳細に記述されており、複合的理学療法を中心に患者・治療者にとって読みやすく治療法が述べられている。最近、急速に進歩しつつある外科的治療に関して述べられていることも、外科的治療を専門とする筆者としてはありがたい思いである。そして、第6章の「社会的状況と資料-日本におけるリンパ浮腫診療の経緯」は、これまで他の成書に記載されていなかった新しい内容の項目であり、興味深い。

本書の特徴は、多くのカラー図を使って読者を飽きさせない工夫をしていることや、至る所に出てくるメモとコラムで専門知識を説明している点である。これらの専門知識はリンパ浮腫を専門とする者にとって最新の重要知識であり、今後の学問的発達にとってもきわめて重要であろう。著者の長い治療経験から打ち出されたこれらの記述は、独創的かつ魅力的である。

このように、本書は従来の教科書では決して学べない、専門家への指南書となっている。また、リンパ浮腫に悩む患者にとっても理解しやすい、きわめて有用なtext bookである。筆者自身、リンパ浮腫の基礎から臨床に関して多くのことを学ばせて頂いた。リンパ浮腫のスペシャリストをめざして複合的理学療法の習得に励む医師やコメディカルにとって、本書はその一助になると確信している。

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