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【書評】『深読みしない Dr.田宮&Dr.村川の心電図ディスカッション』

No.4853 (2017年04月29日発行) P.77

羽田勝征 (榊原記念クリニック循環器内科/埼玉医科大学総合医療センター心臓内科客員教授)

登録日: 2017-05-01

最終更新日: 2017-04-21

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本書は村川裕二先生、田宮栄治先生コンビの『捨てる心電図 拾う心電図』(日本医事新報社刊 2010年)に続く2作目である。田宮先生は私が30年ほど前、JR東京総合病院に赴任したときから血液透析や心エコー、CT、心カテ(後にインターベンション)まで何でもこなすオールラウンドのcardiologistとして活躍しており、大学から心電図の大家として助っ人に来てくれた村川先生ともども、後輩というよりはむしろ楽しく一緒に働いた仲間であった。

ヒポクラテスの時代から、診療にはArs(=Art)が尊ばれてきた。今日、Artは医術であり、「経験による技の習得」である。これはphysical examinationに限らず、広義にはすべての検査所見の読影に通じる技と言える。ガイドラインやエビデンスがすべてではない。心電図の読影は、胸部X線写真とともに、循環器専門医をめざす若い医師が最初に学ぶ基本中の基本である。

本書は、前作同様に2人の掛け合いで読影のコツを語る内容となっている。スタイルは、田宮先生による42症例の心電図提示に続く2人の談義、そして疑問に関する文献の提示、本例への対応、教訓、という構成である。どの症例も我々がよく経験する心電図で、虚血性心疾患4例、各種不整脈(PSVT、心房粗細動、房室ブロック、SSS、VTなど)15例、その他にも、脚ブロック、QT延長、Brugada心電図、肺血栓塞栓症、代謝疾患と多岐にわたり、いずれも教訓的記述に徹している。高カリウム血症のテント状T波は、触ると痛そうかどうかで判断するなど、前作同様“村川節”が随所にみられ、その独断的発言は魅力である。教科書では決して学べない、気軽に読める心電図の指南書となっている。

良き診療をめざしてArtの習得に励もうとする、あるいは励んでいる若い先生方にとって、本書はその一助になると確信している。筆者自身、にんまりしつつ、時にはドキッと反省しながら楽しく一読することができた1冊である。

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