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浅田宗伯(11)[連載小説「群星光芒」248]

No.4836 (2016年12月31日発行) P.70

篠田達明

登録日: 2016-12-31

最終更新日: 2016-12-19

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  • 今村了庵さんの案内で4月1日より開院設する新築の脚気病院を見て回る。
    受付所の脇に「外来診察ハ毎日午前第八時ヨリ同十二時マデ。タダシ日曜日、大祭日ハ除ク」と筆書きした立札があった。
    院内は3棟の平屋が並行して建ち並び、それぞれ3本の廊下で連結する。あたかも田の字を描くような配置である。
    病棟は第1区から第5区に分かれ、各区の入口に大きな掛行燈が吊るしてあった。
    了庵さんが担当する第1区と澄庵の第4区は畳敷き、洋方の第2区、第3区、第5区は寝台が並べてあった。
    人足たちが神田の仮病院から搬入した寝台や戸棚、器材や什器、衣類などを各部屋に運び入れていた。
    中央廊下の突当たりに裏口があり、その向うに2階建ての別棟が建っていた。1階に事務局と大浴場があり、2階が医局となっている。事務局には吏員が2人いて了庵さんを認めると立ち上がって黙礼した。
    すると奥から「やあ、浅田御大直々のお出ましでござるな」と野太い声がして大柄な中年男が現れた。事務長の長谷川 泰だった。
    わしは了庵さんから長谷川事務長の噂話をきいたことがある。

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