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神経障害性疼痛の病態と治療法

No.4694 (2014年04月12日発行) P.63

松本嘉寛 (九州大学整形外科学助教講師)

岩本幸英 (九州大学整形外科学教授)

登録日: 2014-04-12

最終更新日: 2016-10-26

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疼痛が慢性化した状態(慢性疼痛)では,痛みそのものが機能障害の原因となりQOLを大きく低下させる。慢性疼痛の大きな要因として神経障害性疼痛があり,近年その病態に基づく治療法が注目されている。
神経障害性疼痛は末梢/中枢神経系における損傷や機能障害に起因する疼痛である。特徴として,(1)刺激に依存しない自発痛―灼けるような痛み(灼熱痛), 走るような痛み(電撃痛),(2)軽度の刺激によって誘発される痛み,(3)異常感覚,などがあり,しばしば運動障害や自律神経系の異常(発汗異常,皮膚色調の変化など)を伴う。病態の特徴は,侵害受容器が刺激されていない状況で痛みが発生することであり,非ステロイド性抗炎症薬の効果は乏しい。
神経障害性疼痛に対する薬物としては,中枢神経系において興奮性神経伝達物質の遊離を抑制し,異常な神経伝達を遮断することで鎮痛作用を発揮するプレガバリンや,中枢神経からの下行性疼痛抑制系を賦活化する三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど),セロトニン/ノルアドレナリン再取込み阻害薬(デュロキセチンなど)がある。また,これらの薬剤が無効な症例では,作用機序の異なるワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン)も有効である。
上記薬剤の神経障害性疼痛に対する鎮痛効果は高くQOLの向上が期待できるが,疼痛の器質的な原因究明をおろそかにして,対症療法として漫然と投与を継続することは,薬剤の濫用・依存につながる可能性もあり,厳に慎むべきである。

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