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認知症患者とグリア細胞

No.4762 (2015年08月01日発行) P.71

水野哲也 (名古屋大学環境医学研究所 免疫系分野神経免疫分野准教授)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

(1)認知症におけるグリア細胞と脳神経細胞の関係についてご教示下さい。
(2) アミロイドβのほかに脳神経細胞を破壊,萎縮させる物質は発見されていますか。 (群馬県 E)

【A】

(1)グリア細胞と脳神経細胞
認知症(主にアルツハイマー病)における神経細胞障害の一因として,グリア細胞,特にミクログリアによる慢性神経炎症の関与が考えられています(文献1)。アミロイドβおよびタウ蛋白は直接神経障害を引き起こし,傷害を受けた神経細胞からグルタミン酸,HMGB1(high mobility group box 1),核酸(ATP,UDP)などの分子が産生され,ミクログリアを活性化します。さらに,アミロイドβおよびタウ蛋白は,ミクログリアを活性化することによって,ミクログリアの炎症性サイトカイン,グルタミン酸,活性酸素の産生を誘導します。特に,炎症性サイトカインであるinterleukin-1β(IL-1β)は,アミロイドβ蛋白によるNL
RP3インフラマゾームの活性化を通してミクログリアから誘導され,神経障害を引き起こすことが知られています。一方,傷害神経細胞は,フラクタルカイン,IL-34などの分子を産生し,ミクログリアのアミロイドβ蛋白処理の促進,抗酸化作用の誘導により能動的にミクログリアの機能を制御しています。この制御機構の破綻も神経変性の一因として考えられます。
また,脳血流の低下,高血糖は,ミクログリアの活性化を促進することが示されています(文献2)。
(2)脳神経細胞を破壊,萎縮させる物質
現在のところ,アルツハイマー病において神経細胞の傷害を誘導する分子は,アミロイドβおよびタウ蛋白と考えられています。慢性神経炎症という観点から,活性化ミクログリアが産生する炎症性サイトカイン,グルタミン酸,活性酸素は,神経障害を誘導しますが,アルツハイマー病に特異的な分子というわけではありません。

【文献】


1) Heneka MT, et al:Lancet Neurol. 2015;14(4):388-405.
2) Zhang X, et al:Cell Physiol Biochem. 2015;35(4):1571-81.

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