著: | 柴田護(東京歯科大学市川総合病院神経内科 部長・教授) |
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著: | 清水利彦(荏原製作所 産業医,慶應義塾大学医学部神経内科 非常勤講師) |
判型: | A5判 |
頁数: | 272頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2023年06月08日 |
ISBN: | 978-4-7849-2200-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
1章 頭痛の分類と疫学
2章 疾病負担・経済的悪影響
3章 職場での問題点
4章 診断
1:問診・診察の要点
2:鑑別診断
3:画像診断が必要な場合の見極め
4:専門医への紹介のタイミング
5章 片頭痛の病態を理解する
1:頭痛に関係する解剖学
2:片頭痛の病態(最新の理解)
3:CGRP
6章 治療
1:薬物療法(急性期)
2:薬物療法(予防療法)
3:非薬物療法
4:慢性化への対処
5:新規治療法開発の最新情報
7章 薬剤の使用過多による頭痛(MOH)
8章 特別な考慮が必要な片頭痛診療
1:女性特有の問題について
2:小児・思春期
3:高齢者
9章 ケーススタディ
略語一覧
文献一覧
コラム
2022年の春に,日本医事新報社の編集部から片頭痛診療に関する本の執筆依頼を頂きました。ご存じのように,2021年に日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修「頭痛の診療ガイドライン2021」が出版され,片頭痛を含めた頭痛性疾患の診療に関して新しい指針が示されました。同年には,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の経路を標的にしたモノクローナル抗体が片頭痛予防治療薬としてわが国でも承認され,これまで治療が困難であった症例にも高い薬効がもたらされるようになり,片頭痛はこれまでになく注目を集めるようになりました。
片頭痛は通常の検査で客観的な異常所見を呈さないため,診断は必ずしも容易ではありません。一方で,片頭痛が患者さんの生活を大きく阻害し,社会の経済活動に悪影響を及ぼしていることを示すデータが相次いで発表されています。片頭痛は若年者,特に女性に好発するため,少子化が急速に進行し,かつ女性の活躍が今後の社会の発展の鍵とされるわが国にとっては,対策が重要な疾患と考えられます。また,CGRP関連抗体薬をはじめとする新規治療はどのような研究成果を根拠に開発が進められたのかという点も,診療を行う上で押さえておくべきで,重要だと思います。
我々も頭痛診療や片頭痛の研究に長年携わってきた経験がありますので,片頭痛診療に興味を持つ先生方のお役に立てるような内容をもった本が作れるのではないかと考え,本書の執筆を引き受けました。本書には我々の臨床経験から得たノウハウをふんだんに盛り込んだつもりです。また,こぼれ話のような内容の記事はColumnとして記載しています。思い起こすと,我々が片頭痛の研究を開始したのは1990年代前半でした。主として,片頭痛患者さんの自律神経機能や血管作動性物質の血中濃度について研究していたのですが,その時点でCGRPは片頭痛病態との関連性が注目されている分子の1つにすぎませんでした。閃輝暗点などの前兆,激しい頭痛発作,自律神経障害などの片頭痛の多彩な症状に加えて,治療としてエルゴタミンが有効であるといった片頭痛の独特の性質に触れ,片頭痛は神経内科の領域で最も複雑で,病態を把握することが難しい疾患ではないかという考えを抱いていました。2013年に東京でHeadache Master School in Asiaが開催され,世界的なエキスパートの先生方から片頭痛の病態,診断,治療を直接学ぶ機会があり,改めて片頭痛の奥深さを認識させられました。その際に,CGRPを標的にした治療法が,やがて片頭痛治療を一変させるだろうということも語られ,我々は大きな驚きと期待を感じました。CGRPを片頭痛の有効な治療標的と考えて治療開発を推進し,成功させたことはまさに偉業だと思います。
ただし,CGRP機能の抑制によって解決できない片頭痛症例が存在することも事実です。本書を読んで頂ければわかるように,片頭痛の病態はまだわからないことばかりです。したがって,さらに病態について研究を進めて,新たな治療法を考え出さなければいけません。そのためには,多くの先生に片頭痛に興味をもって頂く必要があると思います。本書がそのきっかけになれば,これほどうれしいことはありません。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。
・ 63ページ 4章「診断」-2「鑑別診断」
11行目
【誤】(新しい診断基準については8章-3表 1「022米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)巨細胞性動脈炎の分類診断基準(2022年)」,207頁参照)。
【正】(新しい診断基準については8章-3表 1「米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)巨細胞性動脈炎の分類診断基準(2022年)」,207頁参照)。
・ 207ページ 表1
表タイトル
【誤】022米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)巨細胞性動脈炎の分類診断基準(2022年)
【正】米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)巨細胞性動脈炎の分類診断基準(2022年)
表内 中ほど「検査,画像,生検における診断基準」
【誤】最大赤血球沈降速度≧50mm/時または最大CRP値≧10mg/L
【正】最大赤血球沈降速度≧50mm/時または最大CRP値≧10mg/dL
(本表原典のPonte C, et al. Ann Rheum Dis 2022;81:1647–1653. doi:10.1136/ard-2022-223480においてもLですが,正しくはdLと思われ訂正致します)