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先天性股関節脱臼にみられるアリス徴候

No.4760 (2015年07月18日発行) P.68

及川泰宏 (千葉県こども病院整形外科医長)

西須 孝 (千葉県こども病院整形外科部長)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

小児整形外科の三大疾患の1つである先天性股関節脱臼におけるアリス徴候(Allis sign)を,原典も併せてご教示下さい。 (兵庫県 K)

【A】

アリス徴候は仰臥位で両膝を屈曲しながら股関節を屈曲して両下腿をそろえて左右の膝の高さを比べる診察法であり,膝の高さに差があるときに陽性と診断します。
股関節の脱臼が生じると大腿骨頭が寛骨臼の後方に位置するため,仰臥位で寝かせて骨盤の傾斜をとることで見かけの大腿長が短縮し,罹患側の膝の高さが低くなることが特徴です。片側性の股関節脱臼の診断にアリス徴候は有用である一方,両側脱臼例や下肢に骨性の短縮が存在する症例には有用ではありません(文献1)。
この診察法に関して,わが国では多くの成書にAllis signとして記載されていますが,海外の成書にはAllis signもしくはGaleazzi signとして,1985年発刊のPediatric Orthopedics of the Low-er Extremityに記載されています(文献2)。一方で小児整形外科の代表的な成書であるTachdjian’s Pediatric OrthopaedicsやLovell &Winter’s Pediatric OrthopaedicsにはGaleazzi signとのみ記載されています(文献3,4)。いずれの成書にも,どちらの診察法についても,引用元となる参考文献は記載されておらず,また渉猟しえた範囲では原典を記載している文献を得ることはできませんでした。
この診察法の問題点として,先に述べたように骨性の短縮が存在する症例では有用でない点が挙げられます。診察の際の肢位によって膝の高さには大腿長や下腿長が影響してきます。1976年発刊のPhysical Examination of the Spine and Extremitiesには脚長差の診察法として類似の方法が記載されており,仰臥位で膝を90°屈曲させ足底をつけると,膝の高さや前後の位置関係で下腿長差(図1a),大腿長差(図1b)を評価することができます(文献5)。
原典がないのでAllis sign,Galeazzi signの詳しい診察法について言及できませんが,Pediatric Orthopedics of the Lower Extremityでは股関節,膝関節を屈曲させ両足を水平な検査台にそろえる(図2)(文献2)とし,Tachdjian’s Pediatric Orthopaedicsでは股関節,膝関節ともに90°屈曲位とする(図3)(文献3)としています。いずれの成書とも大腿骨,下腿骨そのものの長さの差については言及されておらず,骨性に脚長差を有する症例と股関節脱臼の鑑別は困難です。簡便に実施できることから股関節脱臼のスクリーニングに用いられることはありますが,診断に用いられることは少なくなってきています。

【文献】


1) 内田淳正, 監:標準整形外科学. 第11版. 医学書院, 2011, p569.
2) McCrea J:Pediatric Orthopedics of the Lower Extremity. Futura Pub Co, 1985, p78-9.
3) Tachidjian MO, et al:Tachdjian’s Pediatric Orthopaedics. 2nd ed. Saunders, 1990, p326-7.
4) Morrissy RT, et al:Lovell & Winter’s Pediatric Orthopaedics. 3rd ed. LWW, 2001, p824-5.
5) Hoppenfeld S:Physical Examination of the Spine and Extremities. Prentice Hall, 1976, p165.

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