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投球障害肩診察のポイント

No.4753 (2015年05月30日発行) P.61

森原 徹 (京都府立医科大学整形外科准教授)

登録日: 2015-05-30

最終更新日: 2016-10-18

【Q】

投球障害肩には様々な病態がありますが,投球動作の何が肩関節障害を起こすのでしょうか。投球障害肩の診察において重要なポイントを。また,治療に際し解剖学的修復のみならず機能的改善が必要ですが,具体的な注意点について,京都府立医科大学・森原 徹先生のご教示をお願いします。
【質問者】
濱田純一郎:桑野協立病院副院長/整形外科・ トレーニング部門部長

【A】

1)肩関節障害を起こす投球動作
胸椎の伸展した良姿勢と胸椎の屈曲した不良姿勢では,肩関節の運動は大きく異なります。良姿勢では肩甲骨は後傾,内転方向へ偏位し,不良姿勢では肩甲骨は前傾,外転方向へ偏位します。不良姿勢の肢位で肩関節を外転運動すると,肩甲骨は後傾のまま内転できないため,相対的に肩甲上腕関節の外旋や水平外転が過剰になります。特に投球動作のlate cocking期では,肩甲骨の過剰な外旋,水平外転運動によって肩関節内の関節唇と腱板付着部にインピンジメントを生じます。
また,投球動作は下肢・体幹・上肢による全身運動で行われます。球速やコントロールを向上させるためには,下肢・体幹で蓄えたエネルギーをボールリリース時の手指へ,いかに効率よく伝達できるかが重要です。follow through期では,ステップ側下肢への体重移動が不足すれば,蓄えたエネルギーを分散できずに肩関節後方へのストレスが増大することになります。
このように不良姿勢や下肢・体幹機能の低下は,肩甲上腕関節の過剰な運動を誘発し,ストレスが増大することによって,肩関節障害をきたします。
(2)投球障害肩の診察ポイント
投球障害がある選手の診察では,まず坐位や立位の姿勢をチェックします。不良姿勢の選手が多いことに気づくと思います。姿勢改善で疼痛が消失すれば,保存療法を選択します。姿勢改善で疼痛が変化しない場合,炎症性か肩関節内の構造破綻の可能性があります。
炎症が強い場合は安静を第一とし,薬物療法や注射を行います。改善しない場合,画像所見などと合わせて手術療法を選択することも重要です。早期に的確な治療方針を決定することが,早期競技復帰へのポイントとなります。
(3)機能的改善のための注意点
競技復帰には,姿勢や投球フォームの改善,負荷量の設定が重要となります。まず,不良姿勢になる要因を早急に明らかにする必要があります。私たちは頸部から体幹,股関節,下肢に至る姿勢異常の原因を10分程度で探索できるスクリーニングテストを行っています。
抽出された原因に対してリハビリテーションをすぐに開始します。臥位や坐位,立位などの単純な姿勢では肩関節の疼痛が消失しても,投球動作肢位では疼痛が再発することがあります。したがって,投球を開始し,負荷量を増加していく過程で実際の投球フォームや姿勢を確認することが必要です。競技復帰に向けて個々の選手に合った具体的な距離と投球数を設定し,負荷量を増加していくことも大切です。

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