特発性膝骨壊死は大腿骨内側顆関節面に好発する軟骨下骨の陥没であり,荷重に対する局所的な脆弱性骨折が治癒されずに関節軟骨や海綿骨とともに遊離したものである1)。内側半月板の変性断裂と合併することが多い。脛骨内側関節面にも生じうる。
中高年に急性発症する膝の疼痛が特徴的な症状である。発症初期は単純X線で異常を認めない。MRIの脂肪抑制付加T2強調画像で大腿骨内側顆または脛骨内側にびまん性の高信号域を認める。軟骨下骨に骨折線が確認されることもある。病期が進むと単純X線でも関節面の陥没と周囲の硬化像が確認でき,骨棘形成や関節裂隙の狭小化など関節症性変化も認められるようになる。
病期と症状によって異なる。
保存的治療として,非ステロイド性抗炎症薬の投与,杖などの使用による荷重制限と可及的安静を指示する。保存療法によって関節面の陥没を防げることもある。MRIで骨折範囲の評価と半月板損傷・逸脱の有無を調べる。可能であれば下肢全長正面X線像にて下肢アライメントの内反・外反を評価する。下肢全長X線が撮れなければ,膝関節正面像にて脛骨関節面と脛骨軸がなす角度(medial proximal tibial angle:MPTA)を計測する。MRIでの骨折範囲が広い場合,半月板逸脱がみられる場合,下肢アライメントが3°以上内反の場合,MPTAが84°以下の場合は保存的治療抵抗性である可能性も念頭に置き,おおむね1カ月後にX線を撮り直すなど注意深い経過観察が必要である。
1〜3カ月の保存的治療で症状の改善が不十分な場合は,下記の外科的治療も検討される。
骨壊死が完成された時期である。保存的治療による壊死部の修復は困難であり,時間経過とともに関節裂隙の狭小化や骨棘形成など変形性関節症の所見もみられるようになる。保存的治療は症状の緩和が主目的となる。非ステロイド性抗炎症薬や弱オピオイドの処方,ヒアルロン酸製剤の関節内投与,膝周囲筋訓練,外側楔状足底板や杖の使用により,症状を軽減させることができる。しかし,それらの保存的治療を1〜3カ月行ってもなお症状の改善が不十分な場合は,下記の外科的治療が検討される。
残り1,297文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する