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【書評】jmedmook93 外来で活きる23の疑問とTips『ジェネラリストの不整脈診療』

No.5240 (2024年09月28日発行) P.70

永嶋孝一 (日本大学医学部附属板橋病院循環器内科准教授)

登録日: 2024-09-04

最終更新日: 2024-09-03

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「近年の不思議な気配を諸君はもう感じただろうか……。循環器の教科書が年々厚くなっているのか,それとも諸君の目の錯覚なのか……」そんなホーンテッドマンションのような台詞の背景には,年々爆増する治療法やエビデンスがある。毎年出る新薬やカテーテル,それを使用した大規模臨床試験,結果に伴い改訂されるガイドライン,改訂も追いつかず,取り急ぎのフォーカスアップデート版……。知識のアップデートが追いつかない。と書いた矢先に,新しい臨床試験がXでポストされている。

まさにエビデンスのビッグバン……。なんかカッコイイ響きだったので書いてみただけだが,ひとえに循環器といっても虚血性心疾患や不整脈,心不全,心エコー分野に細分化され,それぞれの小宇宙がビッグバン……。人間の記憶できる範囲を優に超えている。不整脈専門医の僕にとって,最近のステントやFFRを正確に覚えるのは厳しい。PCI後のDAPTの期間がギリである。HFpEFの診断も怪しいのに,「HFmrEFの“mr”が,“mid-range”から“mildly reduced”に変更された」とか,無駄に覚えることを増やすのは本気でやめてほしい。だいたいHFmrEFってどう読むんだ。そんなことに囚われていると,もう最近のなんちゃらショナルMRとか,ガチで無理無理無理無理。なんだ,hANPってもう過去の薬?知らなかった。

とはいえ,分厚い専門書を最初から読む気力も時間もない……。 非不整脈医も同じ思いではなかろうか。毎年のように出る心房細動のエビデンス……。

「リズムコントロールとレートコントロールって,予後は一緒じゃなかったの?」

「クライオ,焼くヤツ,パルスフィールド……どれでもよくね?」

「HAS-BLEDも無理なのに,HELT-E2S2とか勘弁! CHADS2がギリ!」

そんな悩める非不整脈医に朗報である! 日常診療でよく遭遇する不整脈疾患について,基本的な病態の復習から最新の大規模臨床研究の結果,ガイドラインの推奨まで,まるで不整脈医が個人授業をしてくれているような教科書,『ジェネラリストの不整脈診療』が出た。

第1章では,不整脈診療で避けて通れない「動悸」と「失神」という2症候について,どれだけ解像度の高い問診と鑑別ができるか,そのコツを解説。

第2章では,心房細動を診た際の初期対応,抗凝固療法,アブレーションの適応とそのエビデンス,さらには最新の左心耳閉鎖術まで,心房細動に関するすべての知識がココに。さらに,外来で重要な,睡眠時無呼吸やアルコールやカフェイン,喫煙,運動などの生活習慣と心房細動の関係についてもまとめてある。

第3章では,全医師の嫌いな疾患No.1である上室頻拍の鑑別と抗不整脈薬について,丁寧に解説。こりゃ不得意が得意に変わることもあるのでは?

続く第4章では,徐脈性不整脈やペースメーカーの適応,さらに最新のリードレスペースメーカーにも追いつける内容。

そして第5章では,不整脈専門医ですら覚えられない遺伝性不整脈の診断やICDの適応の極意。

本書は,不整脈医であっても診察室に置いておきたいと思わせる1冊である。時間をかけずに不整脈の最新知識をアップデートしたい循環器内科医や内科医にとって,都合の良すぎる「激推しバイブル」である。

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勤務形態: 常勤
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急性期から回復期、維持期までの疾患の治療・管理はもとより、予防医学としての健診事業にも力を注いでいます。
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救急医療体制については、1次から3次まで幅広く患者さんを受け入れています。
特に3次救急患者さんに関しましては、症状に応じて長崎医療センター及び救急隊と連携をとりながら、必要に応じた救急対応を行っています。また、2次までの救急患者さんに関しては、専門医と総合医が協力し対応しています。
救急医療についても二次救急を担っています。緊急の大血管手術やバイパス手術も行っており、長崎県内外から高い評価を受けています。
なお、日当直体制では、内科・外科系及び循環器系で 救急体制を整えています。
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