株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

アキレス腱断裂[私の治療]

No.5207 (2024年02月10日発行) P.43

平野貴章 (平野整形外科医院)

登録日: 2024-02-10

最終更新日: 2024-02-06

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • アキレス腱断裂は,30~50歳代に受傷することが多い。受傷原因は,スポーツのほか,転倒,転落など事故などでの損傷もある。アキレス腱断裂受傷時の感覚として,後方よりぶつかられたり,蹴られたりするような感覚などを訴えることもある。臨床症状は,アキレス腱断裂部に一致した痛みがあることが多いが,自覚症状が少ないこともあるので注意が必要である。アキレス腱断裂後でも歩行は可能であるため,動くことができるからといってアキレス腱断裂を見逃さないことが大切である。

    ▶診断のポイント

    診察所見として,視診ではアキレス腱のレリーフの消失とともに,断裂部で陥凹を認める。アキレス腱断裂に伴い腫脹があるときは,陥凹がわかりにくいこともあるので注意が必要である。理学所見として,Thompsonテスト1)は有用である。このテストは,腹臥位になり膝を90°曲げた状態でふくらはぎをつかむテストであり,足関節の底屈を認めなければ(動かない状態)アキレス腱が断裂している。単純X線検査では,アキレス腱の石灰化や踵骨付着部の裂離骨折を確認する。また軟部組織の陰影も確認する。超音波検査は有用であり,非侵襲的で客観的に断裂を確認できる検査法である。正常なアキレス腱では,長軸像で連続性をもつ均一な線維状の低エコーを確認できるが,アキレス腱断裂では,断裂と血腫による線維の不連続性が認められる。アキレス腱断裂部の断端形態や腱同士の接触状況を評価することにより,治療法の選択を行う。治療の経過観察時においても,腱の修復状態を把握することができる。MRI検査は,アキレス腱周囲軟部組織の状態の評価にも有用な検査である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    保存療法と手術療法がある。患者の手術希望,年齢,職業,スポーツ歴などを考慮し治療法を選択する。また,日本整形外科学会診療ガイドライン委員会の「アキレス腱断裂診療ガイドライン」2)を確認することが推奨される。

    保存療法では,受傷後底屈位でギプス固定を行う。治療経過を,超音波検査で確認することは有用である。ギプス固定期間は,早期より足趾の運動ができるようにする。受傷後4週で荷重可能な短下肢装具に変更し全荷重歩行に移行する。短下肢装具は,踵部分にパッドが入っているので,段階的に外していく。適切かつ厳密な保存療法を行った場合の治療成績は良好であることが知られている。

    手術療法は,スポーツをするなど活動性の高い患者や早期社会復帰をめざす患者に行う。アキレス腱断裂部を中心に小皮膚切開を置きアキレス腱を縫合する。術後2週間まではギプス固定をし,それ以降は短下肢装具へ切り替えて全荷重歩行にする。小切開で縫合できる経皮的縫合を用いることもある。手術療法の利点として,早期の社会復帰や筋力低下の予防などが挙げられる。

    残り683文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top