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【書評リレーマラソン④】『解剖から理解する頚椎診療』

鐙 邦芳 (札幌整形外科理事長)

登録日: 2023-08-16

最終更新日: 2023-08-10

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2023年7月発売の 『解剖から理解する頚椎診療』(編著:遠藤健司・三原久範) について、頚椎診療のトップランナーに読んでいただき、それぞれの視点から感想と、「私の頚椎診療」という題材で、書評という形でまとめていただきました。
頚椎の数「7」にちなんだ、7名のスペシャリストによる「書評リレーマラソン」と題したこの連載を通じて、トップランナーが大切にする頚椎診療への想いを感じ取っていただけると幸いです。


「解剖から理解する頚椎診療」書評リレーマラソン 第4頚椎(走者)

鐙 邦芳(札幌整形外科理事長)

①本書を読んで

本書を通読して第一に感じた類書との違いは少数の執筆者によって執筆されたことによる統一感でした。本書では執筆者が多い場合にありがちな非統一性や重複が極力排除され,統一感のある構成になっており,編者らの企画力が反映されていると思います。教科書的記載の域にとどまらず,執筆者らの実際の診断・手術経験に基づく記載には,なるほどと思わされる部分が随所にあり,大変参考になります。

上位頚髄に存在する三叉神経脊髄路核と三叉神経領域の知覚異常の関係の記載などはこれまでの類書にはなく,新鮮味を感じました。近年の頚椎instrumentation手術の進歩により,頚椎変形や首下がり症候群の矯正手術が積極的に行われるようになりましたが,それを反映した頚椎アライメント項目の充実も本書の特徴と思います。初心者のみならず,ベテランの知識整理にも至極適した書籍と思います。


②私の頚椎診療

頚椎を含めた脊椎手術に伴うリスクは,画像診断やsupport toolなどの進歩によりかなり軽減できるようになりました。しかしリスクを完全に排除することはできません。リスク回避には,確実な診断をしたうえで,手術が患者にもたらす益/不利益を十分に考慮した手術適応の決定が重要です。

また,患者の利益を最大限にするためには,医療機器メーカーの尻馬に乗った不要なinstrumentation手術や無駄な固定範囲延長どは極力回避されるべきです。後方・前方いずれの手術方法も進歩した現在,大多数の症例は単一アプローチで解決でき,前後合併手術の適応は限定されるべきです。欧米で新しい脊椎治療が広まると,飛びついて猿真似をするという愚挙が日本で行われてきました。それを始めた医師は巨額の経済的恩恵を受けてきましたが,合併症が多発してその有用性が批判されるやいなやさっさとその方法を放り出し,尻馬に乗って屋根に上った追従者は梯子を外される,という醜態が繰り返されてきました。
今,頚椎のinstrumentation手術には隆盛の感がありますが,医師個人や病院の収益のために悪魔に魂を売り,医療の本質から逸脱しないよう心がけたいものです。



☆試し読みはこちら
>>「解剖から理解する頚椎診療」


「解剖から理解する頚椎診療」書評リレーマラソン

第3頚椎(走者)千葉一裕(防衛医科大学校整形外科学講座教授)
 
第5頚椎(走者)清水 敬親(榛名荘病院 群馬脊椎脊髄病センター 名誉センター長)

 

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公益社団法人 地域医療振興協会 市立大村市民病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 総合内科・消化器内科・呼吸器内科・神経内科・整形外科 等 若干名
勤務地: 長崎県大村市

急性期から回復期、維持期までの疾患の治療・管理はもとより、予防医学としての健診事業にも力を注いでいます。
ハイケアユニットから地域包括ケア・回復期リハ病棟まで有しており、地域の皆様に対して急性期から回復期まで切れ目のない医療、充実したリハビリサービスを提供できる体制が整っております。
基幹型臨床研修指定病院として医師の教育にも寄与しています。当協会のコンセプトの1つである離島医療の支援も積極的に行っています。

救急医療体制については、1次から3次まで幅広く患者さんを受け入れています。
特に3次救急患者さんに関しましては、症状に応じて長崎医療センター及び救急隊と連携をとりながら、必要に応じた救急対応を行っています。また、2次までの救急患者さんに関しては、専門医と総合医が協力し対応しています。
救急医療についても二次救急を担っています。緊急の大血管手術やバイパス手術も行っており、長崎県内外から高い評価を受けています。
なお、日当直体制では、内科・外科系及び循環器系で 救急体制を整えています。
現在、内科・外科系の日当直体制は、内科医師が火曜日・木曜日・土曜日 の当直帯及び土曜日・日曜日の日直帯、外科系医師が月曜日・水曜日・金曜日・日曜日の当直帯に救急対応を行っています。
また、大村市夜間初期診療事業(内科系・小児科)に参画しています。
平成29年度より新病院にて診療を開始しております。
●大村市の人口は約99,500人(令和7年3月末日現在)で、県内13市で唯一人口が増加しています

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