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LASIKの長期成績・合併症の現状 【合併症は少ない。度数の戻りや角膜拡張症に注意】

No.4819 (2016年09月03日発行) P.60

佐々木次壽  (佐々木眼科院長)

加藤直子 (埼玉医科大学医学部眼科准教授)

登録日: 2016-10-19

最終更新日: 2016-10-20

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  • 角膜屈折矯正手術(laser in situ keratomileusis:LASIK)が日本で行われるようになって約15年が経過しました。その頃の患者は壮年あるいは老年になっていると思われますが,長期成績や合併症について,埼玉医科大学・加藤直子先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    佐々木次壽 佐々木眼科院長


    【回答】

    LASIKはエキシマレーザーを用いて角膜前面の形状を変化させることにより角膜の屈折力を変え,近視性乱視や遠視性乱視の度数を矯正する方法です。LASIKは,合併症の少ない手術です。LASIKの後に白内障や緑内障が増悪したり網膜剝離などの眼底疾患が増えたりするという科学的根拠はなく,懸念する必要はありません。しかし,LASIK後の眼にはいくつかの特徴があります。たとえば,LASIK後は見かけの眼圧が低く測定されます。これは,角膜表面が平坦化することによるもので,矯正度数が増えるほど術後の眼圧は実際の値より低く表示されます。

    LASIKでは角膜の形状を変化させることだけで屈折度数を矯正するため,角膜以外の変化により生じた屈折のずれには対応できません。たとえば,40歳代以降になると加齢により水晶体が硬化します。また,もともと強度近視だった人の中には,後部ぶどう腫といって眼球が伸長する人もいます。これらの変化により,術後何年か経過するうちに近視や乱視の度数が変化してしまう症例はめずらしくありません。統計的には,LASIKの後は1年で術前の度数の1%程度の戻りがあります。たとえば,術前に−5.0Dの近視があった人は,術直後に0Dの正視になったとしても,術後10年経つと−0.5Dの近視が出てきてしまう計算になります。これは統計的な値であり,実際は個体間でのばらつきがあります。このような戻りに対しては,原因に応じた治療が必要です。白内障が進行したために近視度数が増加した場合は,白内障手術をすることが最も有効な解決法になります。

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