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老健で摂食嚥下リハビリテーションを実践するには?

No.4825 (2016年10月15日発行) P.61

舘村 卓 ((一般社団法人)TOUCH代表理事)

登録日: 2016-10-14

最終更新日: 2016-10-20

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  • 老健において実施可能な摂食嚥下リハビリテーションの実際的な手法について,わかりやすくご指導下さい。

    (質問者:千葉県 M)


    【回答】

    経口摂取すると消化管運動を促して栄養吸収状態が改善され,サルコペニア(加齢性筋肉減少症)からのフレイルティ(虚弱)サイクルを断つことが可能になり,生活参加が支援されます。摂食嚥下リハビリテーションの目的は,身体機能へのリハビリテーション効果を支援して,要介護度や寝たきり度を高めないことにあります。介護老人保健施設(老健)は脳血管障害後のリハビリテーション施設とされていますが,全国老人保健施設協会(全老健)調査では,利用者の85%が認知症です。すなわち,大多数が,認知症と脳血管障害の問題を有して多様な嚥下機能障害像を呈しています。従命できない人も多く,コミュニケーションが可能な人を対象としたリハビリテーションプログラムの遂行は難しく,日常生活の中で可能な方法が必要です。本回答では誌面の都合上,経口摂取をしている寝たきり度B2より軽度の方を対象とした最低限守るべきことを記述します。

    誤嚥リスクのある人の経口摂取に伴う問題は,誤嚥性肺炎や窒息事故が生じた際に,急性期医療機関で非経口摂取とされて床上安静で経過する結果,全身機能のみならず口腔機能も廃用化し,退院後には要介護度や寝たきり度が高くなることです。また,リハビリテーション利用開始前に,このような処置がとられていた場合,既に口腔機能は廃用化して咀嚼嚥下機能が低下している可能性があります。まず,誤嚥性肺炎と窒息を予防しつつ,廃用化の改善に取り組むことが必要です。

    摂食嚥下リハビリテーションでも口腔清掃でも,口腔に刺激を加えると,刺激性唾液が生じます。安全に嚥下できず,歯垢で汚れた刺激性唾液を誤嚥すると肺炎が発症します。したがって,まず,口腔清掃でもリハビリテーションでも,①安全に嚥下できる姿勢を確保します。その上で食前に②口腔清掃と摂食嚥下リハビリテーションによる口腔咽頭機能の賦活訓練を同時に行います。その後,③口腔咽頭機能レベルに応じた調理法による食事を提供します。以下,①~③について詳しく説明します。

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