株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【書評】『症例から学ぶPICSの予防と早期介入』その先へ〜推薦のことばにかえて

No.5148 (2022年12月24日発行) P.68

志馬伸朗 (広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学教授)

登録日: 2022-12-24

最終更新日: 2022-12-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

このたび,しげあき先生が編者となって,『症例から学ぶPICSの予防と早期介入』を上梓されることとなった。大変おめでたい。

先見の明,ということばがある。先見の識,がより適切かも知れない。しげあき先生にとってのPICSはまさにそれが当てはまる。恐らくは日本の集中治療の現場で最初にこのことばを使い始めたのは彼ではなかったか。10年とすこし前,集中治療ではたらく多くの医療従事者にとって,それは先見的で画期的な概念であった。

もちろん医療従事者に先を見通す能力が求められるのは,PICSだけではない。ERでも,ICUでも,患者の今後の変化を,治療介入の効果を見越して,その先を考えて動かないといけない。恐らく彼は普段からその様な診療や研究行動が出来ているのだと思う。

話を戻す。確かに筆者が,あるいは一世代下のしげあき先生がICUで働き始めた頃は,重症患者にありとあらゆる器械や管をつないで,助かるか亡くなるか“のみ”が集中治療であった。しかし過去数十年で,その概念は大きく変化してきた。

われわれは,もっと広い視野で,多様な価値観を持って,先を見据えた集中治療を実践しなければならないのだ。

この考えに沿った集中治療の目標が,“より良い死に方”であり,“より良い助かり方”にある。後者に挑むのが,PICSの概念を取り入れた集中治療の実践であり,そしてそれは本書のテーマそのものである。

量的かつ質的な長期予後改善を伴った救命という概念は,口に出すことはたやすいが行うことは容易でない。さらに今後,高齢化,医療の複雑化と高度化に伴い,困難さは増すばかりであろう。対応可能な医療資源にも大きな拡大は見込めない。そんな中でも,いや,困難な“この先”であるからこそ,本書の存在意義がおおいにある。

是非本書を手に取って頂き,しげあき先生の見つめるその先に,共に進んで下さればと願う。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top