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症例から学ぶPICSの予防と早期介入【電子版付】

実症例を紐解き、PICS対策の最新知見を共有します

定価:6,050円
(本体5,500円+税)

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監修: 西田修(藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座 主任教授/藤田医科大学病院集中治療部 部長)
監修: 小谷穣治(神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野 教授/神戸大学医学部附属病院救命救急センター センター長)
編著: 井上茂亮(神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野 特命教授)
判型: B5判
頁数: 288頁
装丁: 2色部分カラー
発行日: 2022年10月21日
ISBN: 978-4-7849-5971-6
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)。

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●PICS(集中治療後症候群)は,ICU滞在中また退室後,退院後に生じる身体・精神・認知の障害で,患者と家族の人生に大きな影響を与えます。
●超高齢社会にあって,PICSは,医療問題・社会問題としてとらえるべき課題と言えます。
●本書では,PICSの概念など総論的な内容にとどまらず,PICSの評価法,予防と早期介入,PICSの症例を紹介し,具体的・実践的にまとめました。
●PICSの経済的影響,関連病態,先進的かつ革新的なPICS管理法,そして地域連携など,ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えて,PICSの多様性に応じた対応・対策の一例を紹介しています。
●集中治療医,救急医,麻酔科医,その他の診療科の医師,看護師,理学療法士,作業療法士,薬剤師,管理栄養士,歯科医師など,PICSを診るすべての医療従事者におすすめです。

診療科: 救命救急 救命救急

目次

第1章 PICSとは
1 集中治療後症候群(PICS)とは
2 PICSとその疫学
3 運動機能障害
4 認知機能障害
5 精神障害
6 PICS-F
7 小児における集中治療後症候群(PICS-p)
8 PICSの評価

第2章 PICSの予防と早期介入のポイント
1 PICSのリスクとその評価
2 ABCDEFバンドル
3 せん妄対策
4 早期リハビリテーション
5 神経筋電気刺激療法・エルゴメーター
6 栄養療法
7 看護ケア
8 多職種による病棟回診・外来フォロー
9 ECMO患者のPICSとその対策

第3章 症例から学ぶPICS管理
1 敗血症
2 ARDS
3 COVID-19
4 熱傷
5 PCAS/中枢神経障害
6 皮膚軟部組織感染症
7 うっ血性心不全

第4章 これからのPICS管理
1 PICSの経済的影響
2 PICSの関連病態(PIICS)
3 これからのPICS管理
4 地域医療との連携(地域包括ケアを含めた)

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序文

編著者序文

 PICSの提唱から今年でちょうど10年が経つ。10年前,集中治療を受けた敗血症患者の多くは身体的および精神的な障害を抱え,それらが社会復帰や長期予後の障壁となっていることが問題となった。PICS(集中治療後症候群)とは,ICU滞在中また退室後,そして退院後に生じる身体・精神・認知の障害で,患者家族も精神障害をきたす。2012年に米国集中治療医学会で産声を上げたこのPICSの概念は日本のみならず世界中の多くの医療従事者より共感され,日進月歩で様々な研究が展開されている。本書では各領域のエキスパートに,PICSの最新知見を共有していただいた。
 本書の最大の特徴は,単にPICSの概念など総論的な内容にとどまらず,PICSの評価法,予防と早期介入,そして何よりPICSの実症例を紹介していることである。第3章ではARDSや熱傷,心不全など実に様々な重症疾患がPICSを引き起こすことを紹介した。是非,実際の症例から多くのことを感じ,学び,そして明日からの診療の一助になれば幸いである。さらに最終章では,これからのPICS管理を示している。PICSの経済的影響,関連病態,先進的かつ革新的なPICS管理法,そして地域連携など,ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えて,PICSの多様性に応じた対応・対策の一例を紹介している。
 私自身,多くのPICS症例を見てきた中で,最近特に感じているのは,「家族」のありがたさ・偉大さである。突然の急病でICUに入室し,死の淵から生還した重症患者を支えるのはやはり「家族の愛」である。この家族こそ実は,PICS対策のバンドルの中でも最大かつ最強の介入で予後改善因子なのではないか。私はそう考え,表紙イラストは温かい家族の絵にしたいと思っていた。そんな折に,偶然にも監修者の小谷穣治先生が中学時代の同級生で建築デザイナーの日高修氏が描いた絵を見せてくれる機会があった。私は「これだ!」と直感して日高修氏に表紙イラストの制作をお願いした。人々の温かい愛で,一人でも多くのPICS患者さんが社会復帰し,幸せになることを祈って。

 最後に,本書の企画から校正まで根気強く支えてくれた日本医事新報社の長沢雅さんをはじめ,関係者の皆様に心からお礼申し上げます。

神戸大学大学院医学研究科外科系講座
災害・救急医学分野 特命教授
井上茂亮



監修者序文

 集中治療の進歩により,重症病態の救命率は著しく改善してきている。一方で,ICUに長期間入室した生存者の多くは,退院後も長期にわたり身体的,精神的な問題を抱え,社会復帰が困難となっていることが明らかになり,集中治療後症候群(PICS)として認識されてきている。さらに,家族への精神的な影響はもとより,社会生活における影響も甚大であり,介護のために家族自身が離職を余儀なくされるなど社会的な損失も非常に大きい。特に小児は,家族との相互依存関係が非常に強く,成長・発達中の過程で発生した重篤な病態の結果として,患児の機能障害と家族の反応は相互に影響を与え折り重なる。これは、学校生活や家族の失職・同胞の関係性のこじれなどに発展し、長期的な影響も大きい。
 少子高齢化が進む中で,救命率が向上するにつれ,要介護となる人々が増え,家族の負担が増える構図は社会的に健全な状態とは言えず,集中治療の存在意義自体が揺るぎかねないパラドキシカルな問題をはらんでいる。  集中治療は,救命の先にある社会復帰を目標とすべきものであり,PICSは,医療が進歩した現代において,人類に突き付けられた新たな課題ともいえる。PICSは,医療問題のみならず,社会問題としてとらえるべきであり,社会全体で取り組むべき課題でもあると言える。
 日本集中治療医学会では,「PICS対策・生活の質改善検討委員会」を立ち上げ,積極的に活動を行っている。本書は,その委員長であり,日本におけるPICS研究の第一人者である井上茂亮先生を中心に立案され,それぞれの分野のトップランナーにより執筆されている。PICSの解説から始まり,予防と早期介入,PICS管理について症例も提示して大変具体的にわかりやすくまとめられており,実践に役立つ構成となっている。さらには,集中治療の現場だけでなく,地域医療との連携に至るまで幅広く取り上げられている点も素晴らしい。
 日本では,すでに超高齢社会に突入している。本書が,集中治療に携わる幅広い職種の方々のみならず,広く人々に読まれ,健康寿命の長い高齢化社会実現の一助となることを願ってやまない。

2022年9月

藤田医科大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座 主任教授
藤田医科大学病院集中治療部 部長
西田 修



監修者序文

 私が医師になった頃は(前半15年は消化器外科にいました),患者さんが今ほど高齢でなく,また死ぬという概念が今よりも相当に恐れられていたからだと思いますが,まず癌を取り除くためにリンパ節を徹底的に郭清していました。患者も死の病から逃れるために全力で手術に耐え,術後は生きていさえすればいいという概念だったと思います。術前に「先生,ぜ〜んぶ取ってよ!」とよく言われました。しかし,術後にはリンパ節郭清に伴う神経障害による腸管蠕動不全,吸収障害,感染症の遷延など多くの合併症があり,退院後も長期にわたり外来で診察していて,「こんな状態で生き延びてもいいのかな」と時々疑問に思いました。また,集中治療室はなく,術後患者は病棟の詰め所横のリカバリールームに入りました。時として重症でしたが,「外科手術患者=重症」は当たり前の感覚でした。当初は人工呼吸器にCMVしかなく,患者さんが呼吸器に合わせて呼吸しないといけないなど,結構過酷な状況でした。術後敗血症,ARDSを発症して1週間ほど人工呼吸器に乗っていた患者さんが,上司がいなくなった土曜日の昼下がりに,一番下っ端の私を手招きで呼ぶのです。そして,震える字で「ころしてくれ」と書かれたメモを渡されたときのことは忘れられません。それほど苦しかったのですが,生きるためにはそれも仕方ないという時代でした。
 しかし,術後や重症患者の集中治療はその後著しく発展し,また多くの基礎・臨床研究の結果に基づいて治療ガイドラインが作成され,治療の標準化が進み,その結果,ICUおよび病院での生存率は著しく改善しました。そしてICUにおける快眠や痛みのコントロール,術前からの精神的介入,手術前の炭水化物投与,これらを含む術後早期回復プログラム(ERAS:Enhanced Recovery After Surgery)などが導入され,集中治療における患者さんの苦しみを低減することが治療目的のひとつとなっています。
 さらに,手術や重症病態からの生還者が退院や転院したあと,1年,2年,3年,もしかしたら5年先の生存率,いやそれどころか長期にわたり快適に人生を謳歌できるということが治療目的になってきました。また患者さん側の変化として,高齢化・多死社会を迎え,自然災害や人災,テロや戦争も多く,さらには今回のCOVID-19感染パンデミックを経験し,人はいつか死ぬという現実を人々が受け入れるようになったと感じます。そして,生きているうちは快適に生きたい,そのためには一か八かの徹底的な治療を行うのではなく,ICU生還後の人生も見据えた治療の選択を望む時代になったと思います。
 このような背景のもとに10年前にpost-intensive care syndrome(PICS)の概念が提唱されました。驚くことに,そして素晴らしいことに,患者さんの身体・精神・認知の障害のみならず,その家族の精神障害もテーマとなっています。退院患者さんの外来では,サポートする家族の苦労はほぼ毎回話題になり,私は介護施設を紹介したり,手伝ってくれる人をシルバー派遣センターに頼んだりして来ましたので,これは素晴らしい着眼点だと思いました。
 さて,私の思いの丈を長々と書きましたが,このようなICU生還者の長期にわたる快適な人生を目指すための概念がPICSです。本書にはPICSの概念,治療法,そして次の時代の課題について,編者でもある井上茂亮先生はじめ本邦の新進気鋭の方々が丹精込めて執筆され,また全体を通して読めばPICSの全体像が物語のよう理解できる構成であり,良い本に仕上がっていると自負しております。どうぞ手にとってお楽しみください。そして今日からのPICS治療に役立てていただければ幸甚です。

2022年9月

神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野教授
神戸大学医学部附属病院救命救急センターセンター長
小谷穣治

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