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ビスホスホネート長期服用中の骨粗鬆症患者への今後の治療は?

No.4822 (2016年09月24日発行) P.61

宗圓 聰 (近畿大学医学部奈良病院整形外科・リウマチ科教授)

登録日: 2016-09-23

最終更新日: 2016-10-06

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  • 80歳代,女性。骨粗鬆症に対して他院で約10年ビスホスホネートを投与され,骨折の既往はなく当院へ転院後,休薬を検討しましたがYAM 腰椎55%,大腿骨63%と高リスクと考えられます。骨代謝マーカー,TRACP-5B(骨型酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ)は207mU/dLと基準内でした(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」,p97を参照しました)。
    今後の治療としては,①継続,②休薬,③他剤に変更などが考えられますが,どの選択肢が適切でしょうか。

    (質問者:神奈川県 O)

    まず,本例において予防すべき骨折について考えます。脆弱性骨折のうち全年代で部位別に最も頻度が高いのは椎体骨折ですが,70歳代以降は大腿骨近位部骨折のリスクが急激に増加します1)。ご質問の症例は80歳代で大腿骨近位部の骨密度が63%と低いので,大腿骨近位部骨折を予防すべきであると言えます。

    大腿骨近位部骨折の抑制効果のエビデンスは,保険適用外の結合型エストロゲンを除けばビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸ナトリウム水和物,リセドロン酸ナトリウム水和物と抗RAN KL抗体製剤であるデノスマブに限られます1)。つまり,本例に対して選択すべき薬剤はビスホスホネート製剤かデノスマブということになります。

    ビスホスホネート製剤は骨への蓄積があり,その長期投与に関するアルゴリズム(図1)2)が米国骨代謝学会の委員会より報告されています。本アルゴリズムは臨床試験が経口製剤で最長5年弱,静注製剤で3年,長期試験が最長10年間実施されていることに基づいています。そのため,本例のように10年投与したあとについては本アルゴリズムが適応できないことになります。10年間治療したあとに,既存骨折はないものの,大腿骨近位部の骨密度がなお骨粗鬆症領域にあるため骨折リスクは低減できていない恐れがあるということです。

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