◉高尿酸血症・痛風の原因には遺伝的要因と環境的要因がある。
◉血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるとする高尿酸血症の基準は,MSU結晶が組織にできる値である。
◉MSU結晶を白血球が貪食すると,インフラマソームが活性化してインターロイキン1βが分泌され,痛風発作が誘発される。
◉痛風は臨床的特徴,検査所見,画像所見からスコア化して診断できる。
◉高尿酸血症の病型にしたがって尿酸降下薬を選択する。
◉痛風発作の治療薬には3種類があり,使い慣れた薬剤を使用し,予防にはコルヒチンカバーを用いる。
◉痛風,高尿酸血症の臓器障害予防には,ガイドラインの推奨にしたがう。
◉生活指導の中心はカロリー制限と節酒ならびにプリン体制限である。
◉血清尿酸値と合併症の関係は,尿酸異常症という概念で包括される。
食生活の欧米化に伴って,わが国の痛風患者は経年的に増加し,2022年の統計では130万人に達している。また,原因疾患である高尿酸血症患者も経年的に増加し,1000万人になっている。尿酸は,食事から摂取されるプリン体と体内で合成されるプリン体から1日0.7g産生され,腎臓から0.5g尿中に,消化管から0.2g便中に排泄され,血清尿酸値が5.0mg/dL前後に保たれている。
したがって,血清尿酸値の上昇はプリン体からの尿酸産生過剰,または腎臓ならびに腸管からの尿酸排泄低下により生じるため,高尿酸血症は尿酸産生過剰型,腎臓からの尿酸排泄低下型と,消化管からの尿酸排泄低下による腎外排泄低下型の3病型に分類される。特に,尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型に対しては,プリン体制限を含む栄養療法が効果的である。『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』では,高尿酸血症の治療は6・7・8のルールにしたがって行われる1)が(「5-1 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』診療アルゴリズム」を参照),まずはアルコール制限を含む食事指導を中心とした生活習慣の修正を行う。
血清尿酸値の基準値は,2.1~7.0mg/dLである。血清尿酸値には著明な性差があり,男性では小児期から20歳くらいまで上昇後にプラトーに達し,その後ゆるやかに上昇する。女性は,男性に比して1.0~2.0mg/dL程度低いが,これは女性ホルモンの尿酸の排泄亢進による。したがって,閉経以降に上昇し,男性の値に近づく。血清尿酸値は外因性のプリン体摂取,内因性プリン体からの産生および腎臓や腸管からの尿酸排泄より規定される(図1)2)。
男女問わず,血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると体液中の尿酸の飽和濃度を上回り,尿酸が結晶として関節や臓器に析出しやすくなる。その結果,結晶による痛風関節炎,尿路結石や痛風腎などの臓器障害をきたしやすくなるため,ガイドラインでは7.0mg/dLを血清尿酸値の正常上限の基準値としている。低尿酸血症に関しては,血清尿酸値が2.0mg/dL以下では運動後急性腎不全や尿路結石の発症リスクとなる場合があるので,『腎性低尿酸血症診療ガイドライン』では2.1mg/dLを低尿酸血症診断の際の正常下限の基準値としている3)。
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