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鏡視下上方関節包再建術の手術適応,コツ,そして,未来像は?

No.5101 (2022年01月29日発行) P.52

山本宣幸 (東北大学医学部整形外科准教授)

三幡輝久 (大阪医科薬科大学整形外科学教室准教授)

登録日: 2022-01-26

最終更新日: 2022-01-25

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  • 鏡視下上方関節包再建術は,“game changer”と言われ,腱板広範囲断裂に対する手術改革を起こした術式と言えます。欧米を中心に爆発的に広まった術式ですが,手術適応についてはまだ術者によって異なり,術後成績も様々であると言えます。経験された多くの症例を振り返って,どのような手術適応が最もふさわしいと言えるでしょうか。また,術式がやや煩雑で手技的に難しいと言われていますが,手術のコツやピットフォールなどを教えて頂ければと思います。そして,今後この術式はどのように進化し,変遷をしていくのか,未来像について展望をご教示頂ければと思います。
    大阪医科薬科大学・三幡輝久先生に回答をお願いします。

    【質問者】

    山本宣幸 東北大学医学部整形外科准教授


    【回答】

    【多くの整形外科医が行えるように肩上方関節包再建術を簡便化することが課題である】

    腱板広範囲断裂の多くは陳旧性断裂を伴っており,棘上筋や棘下筋の高度な萎縮や変性を認める場合には修復が困難なことも少なくありません。そのような修復困難な腱板断裂に対して我々の考案した肩上方関節包再建術は,肩甲上腕関節の安定性を高め,骨頭を求心位に保持することにより肩関節の可動域と筋力を回復させる術式です。

    (1)腱板断裂の術式選択

    腱板断裂に対する術式(腱板修復術あるいは肩上方関節包再建術)は,術前のMRI所見で判断します。

    ①腱板修復術:棘上筋や棘下筋の脂肪変性がほとんどなく,腱板断端における腱成分の厚みと輝度が正常に近い場合には,腱板修復術を行います。
    ②肩上方関節包再建術+腱板修復術:修復可能ですが,腱板断端における腱成分の厚みが薄く,筋腱移行部に脂肪変性を認める場合には上方関節包再建術を行った上で腱板修復術を行っています。
    ③肩上方関節包再建術:棘上筋や棘下筋に重度の萎縮や脂肪変性を認め,腱板断端における腱成分がほとんど消失している場合には修復不能なことが多く,肩上方関節包再建術を選択します。

    スポーツや重労働への復帰率が高いことから活動性の高い若年者において推奨される術式ですが,内科的合併症を認めることの多い高齢者においても人工関節より低侵襲である鏡視下肩上方関節包再建術は有用です。

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