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モートン病[私の治療]

No.5099 (2022年01月15日発行) P.47

田中康仁 (奈良県立医科大学整形外科学教室教授)

登録日: 2022-01-14

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  • モートン病は,踏み返し時に中足骨頭レベルの足底に激痛を生じる疾患で,中年以降の女性に好発する。総底側趾神経ならびにそれから分岐した固有足底趾神経が,圧迫や摩擦を受けて生じる摩擦性神経障害である。先の細い靴を履くと荷重時に骨頭間が広がらず,圧迫の要因となる。慢性的なストレスにより神経が肥大し,偽神経腫を形成する。モートン神経腫と呼ばれることもある。超高齢社会を迎え,本疾患に対する認識が広まったこともあり,患者数が増加している。

    ▶診断のポイント

    【問診】

    症状は「刺すような痛み」と表現することが多く,歩行時に著しく,安静時に軽減する。発症には靴の関与が示されており,パンプスなどきつい靴を履いたことがないか必ず聞く必要がある。裸足で床の上を歩くときにもしばしば疼痛を訴えることがあるので,疼痛が生じる状況を丁寧に問診する。靴を履いたまま長時間立つ仕事などで発症することも多いので,職業歴も忘れず聴取する。

    【触診・理学所見】

    足底から趾神経を触知することが最も重要である。圧迫により疼痛を再現させることで診断がつけられる。発生部位は第3趾間が最も多く,ついで第2趾間にみられ,第1,第4趾間にみられることは稀である。第3趾間に多いのは,脛骨神経から分岐した内側・外側足底神経のそれぞれの枝が第3趾間部で吻合し,神経が太くなっていることが原因している。中足部を両側から強く握ると疼痛が再現されることがある(Mulderテスト)。また2/3の例では趾間の感覚低下を伴う。

    【画像診断】

    MRIでは偽神経腫はT1強調像で低信号に描出される。T2強調像は,中足趾節間滑液包炎との鑑別に有用である。荷重をシミュレーションしてMRIを撮像すると,神経腫が骨頭間に入り込み,診断が難しいことがあるので,非荷重で撮像する。

    【鑑別診断】

    荷重時に罹患した足趾間が広がる趾間開大徴候がみられることがあり,特に第2趾間罹患例に多いが,関節リウマチの初発症状であることがあるので,注意を要する。これはリウマチ性骨頭間滑液包炎が原因している。また,丁寧な触診により,中足趾節関節の底側板障害や胼胝による中足痛と鑑別しなければならない。加えてフライバーグ病や疲労骨折など,中足部に疼痛を訴える疾患も考慮する必要がある。

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