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骨軟化症[私の治療]

No.5092 (2021年11月27日発行) P.45

星野裕信 (浜松医科大学整形外科学講座准教授)

登録日: 2021-11-27

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  • 骨軟化症は,骨端線閉鎖後に骨の石灰化障害によって生じる疾患である(骨端線閉鎖前はくる病と言う)。原因としては,ビタミンDの作用障害(ビタミンD欠乏,ビタミンD活性化障害,ビタミンD受容体異常)または慢性の低リン血症などがある。組織学的には,骨芽細胞により産生される類骨が石灰化せずに増加している。病状が進行すると長管骨の変形や病的骨折をきたすこともある。

    ▶診断のポイント

    原因不明の骨痛,関節痛,腰痛,筋力低下を訴えて受診することが多い。血液検査所見では高アルカリホスファターゼ血症をきたしている。低リン血症をきたしている場合は血清FGF23値の測定が有用であり(2019年10月より保険適用),基準値を超える場合にはFGF23関連低リン血症として,腫瘍性骨軟化症の可能性を考えた局在診断を行う。典型例では,単純X線で長管骨の骨軸に横走する骨改変層がみられることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    低リン血症性骨軟化症の場合の原因検索と,ビタミンD作用障害の障害部位を鑑別して治療方針を組み立てる必要がある。また近年では,高齢者においてビタミンD不足の頻度がきわめて高いことがわかっており1),血清25(OH)D値を測定してビタミンDの充足状態を評価する必要がある。病状が進行してくると痛みや筋力低下をきたし,長管骨の変形などを生じてくることがあるが,こういった症状がある場合でも薬物療法が奏効すれば,症状は改善してくることが多く,対症療法と並行して原因薬物治療を行う。薬物治療の基本は,それぞれの病態において石灰化に必要な要素(カルシウム,リン,活性型ビタミンD3)のうち欠乏している要素の補充を行うことである。その際に血中カルシウム値やリン値のみならず,血清25(OH)D値や1,25(OH)2D3値も参考にしながら補充すべき要素を決定する。

    低リン血症性骨軟化症の場合,時にFGF23関連低リン血症として発症する腫瘍性骨軟化症がある。この場合はFDG-PET検査,MRI等の画像検査により腫瘍の局在を同定し,腫瘍を切除することで症状は劇的に改善する。この際に,疑わしい腫瘍があれば,選択的静脈サンプリングで局所のFGF23高値を証明することも有用である。腫瘍が同定できない場合には,経口リン製剤を長期にわたり補充する必要があることもある。現在処方可能なリン製剤で保険適用となっているものは,ホスリボン配合顆粒のみである。ビタミンD抵抗性くる病の成人期やビタミンD欠乏による骨軟化症では,アルファカルシドールやカルシトリオールなどの活性型ビタミンD製剤を用いるが,カルシウム製剤を併用する際には高カルシウム血症や尿路結石に注意する必要がある。さらに病状の進行により下肢長管骨の変形が生じた場合には,矯正骨切り術が適応となることもある。

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