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坐骨神経痛[私の治療]

No.5020 (2020年07月11日発行) P.44

千葉一裕 (防衛医科大学校整形外科学講座教授)

登録日: 2020-07-12

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  • 坐骨神経痛は,臀部から下肢にかけて出現する痛みやしびれを指す症状名である。坐骨神経は第4腰神経から第3仙髄神経で構成されるが,第5腰神経根および第1仙髄神経根が腰椎疾患で圧迫・刺激されることで生じる例が多い。椎骨や神経の腫瘍,化膿性炎症による膿瘍,外傷や骨粗鬆症性椎体圧潰など重篤な疾患によって生じることもあるが,多くは椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など退行変性疾患が原因となる。稀に,骨盤内腫瘍や梨状筋症候群などの絞扼性神経障害でも生じる。

    ▶診断のポイント

    臀部から大腿後面,さらに下腿外側から足背(L5)あるいは下腿後面から足底(S1)にかけて,電気が走るような鋭い痛み,ビリビリとしたしびれ,時として灼熱感や締め付け感,重だるさ,脱力などが生じる。多くの場合,長時間の坐位・立位など特定の姿勢,前屈動作や歩行などの運動負荷で増悪し,安静で軽減する。

    脊椎疾患による神経根障害では,障害された神経根によって腱反射低下・消失,感覚障害,筋力低下など,特有の神経所見を呈する。また,臀部から坐骨神経痛に沿った圧痛点(Valleix point)を認める。青壮年の椎間板ヘルニアでは,痛みを避ける疼痛性側弯・跛行に加え,下肢伸展挙上試験(straight leg raising test:SLRT)が陽性となることが特徴的である。

    単純X線では,椎骨の融解,圧潰,配列の乱れ,椎間板狭小化などの明らかな所見をみることもあるが,変性疾患の場合,確定診断にはMRIが必要となる。神経所見を説明できる腫瘍,膿瘍,骨片,ヘルニア,すべりや狭窄による神経の圧迫があれば診断は確定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは診断を確定することが第一であり,腫瘍,炎症,外傷など重篤な病変・病態が明らかとなれば,その治療を優先する。椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症など,脊椎退行変性疾患が原因の場合,まず薬物療法,理学療法,装具療法などの保存療法が第一選択となり,大多数の症例は保存療法で軽快する。一方で,経過中に急性馬尾障害による進行性下肢麻痺や膀胱直腸障害が生じた場合は,緊急手術の適応となる。また,保存療法に抵抗性の痛み・しびれが続き,日常生活や学業・就業に支障をきたし患者が希望する場合も手術適応となる。その場合,患者に病態,手術の得失,可能性のある合併症などをよく説明し,同意を得た上で病態に応じてヘルニア摘出術,脊椎除圧術,固定術など最適な術式を選択する。術式決定のため,必要に応じて脊髄造影,椎間板造影,神経根造影などの造影検査と,その後にCT検査を行う。

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