株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【書評】『在宅感染治療学』とでもいうべき新しい学術フィールドの提案

No.5005 (2020年03月28日発行) P.64

佐々木 淳 (医療法人社団悠翔会 代表医師)

登録日: 2020-03-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ここ数日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大対策に追われている。在宅というセッティングでの厳格な感染管理の難しさを感じていたまさにその時、この新刊を手にすることになった。
在宅高齢者は脆弱だ。感染症を繰り返し、感染症で亡くなる人が多い。

だからこそ私は、在宅医療の使命の1つは感染症の予防、つまり発症を予防すること(一次予防)、早期発見・早期治療で入院を減らすこと(二次予防)、入院を選択する場合は、機能障害が顕在化する前に退院させること(三次予防)にあると考えている。

しかし感染症の予防には限界がある。また症状が非典型的であったり、認知症などで訴えのない人もおり、早期発見は容易ではない。治療にはアドヒアランスから自ずと制約が生じる。多剤耐性菌に対しても在宅ではグリーンゾーンとレッドゾーンを明確に区分できない。そして人生の最終段階で、どこまで感染症として治療すべきか、臨床倫理的な状況判断、意思決定支援が求められる。

つまり感染治療学の教科書通りにはいかないのが、在宅での感染症治療なのだ。

多くの仲間たちが、日々悩みながら在宅での感染症治療に取り組んでいることと思う。

本書は、そんなモヤモヤに対する明確なガイダンスとなっている。

エビデンスに基づくbiologicalな視点、患者・家族の生活をそっと見守るbiographicalな視点、この2つがバランスよく配され、在宅での感染症治療のあり方を立体的に捉えることができる。そのタイトル「高齢者の暮らしを守る在宅感染症診療」にある通り、生活を支えるための手段としての感染症治療のあるべき姿が具体的に示されている。

超高齢化の進行に伴い、感染症治療のメインフィールドは病院から自宅や施設にシフトしていく。優れた感染症専門医でありながら在宅医療にも精通する筆者による、まさに「在宅感染治療学」とでもいうべき新しい学術フィールドの提案といってもいいかもしれない。

在宅医療のみならず、高齢者医療に関わる病院の関係者にもぜひご一読をお願いしたい。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

公益社団法人 地域医療振興協会 市立大村市民病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 総合内科・消化器内科・呼吸器内科・神経内科・整形外科 等 若干名
勤務地: 長崎県大村市

急性期から回復期、維持期までの疾患の治療・管理はもとより、予防医学としての健診事業にも力を注いでいます。
ハイケアユニットから地域包括ケア・回復期リハ病棟まで有しており、地域の皆様に対して急性期から回復期まで切れ目のない医療、充実したリハビリサービスを提供できる体制が整っております。
基幹型臨床研修指定病院として医師の教育にも寄与しています。当協会のコンセプトの1つである離島医療の支援も積極的に行っています。

救急医療体制については、1次から3次まで幅広く患者さんを受け入れています。
特に3次救急患者さんに関しましては、症状に応じて長崎医療センター及び救急隊と連携をとりながら、必要に応じた救急対応を行っています。また、2次までの救急患者さんに関しては、専門医と総合医が協力し対応しています。
救急医療についても二次救急を担っています。緊急の大血管手術やバイパス手術も行っており、長崎県内外から高い評価を受けています。
なお、日当直体制では、内科・外科系及び循環器系で 救急体制を整えています。
現在、内科・外科系の日当直体制は、内科医師が火曜日・木曜日・土曜日 の当直帯及び土曜日・日曜日の日直帯、外科系医師が月曜日・水曜日・金曜日・日曜日の当直帯に救急対応を行っています。
また、大村市夜間初期診療事業(内科系・小児科)に参画しています。
平成29年度より新病院にて診療を開始しております。
●大村市の人口は約99,500人(令和7年3月末日現在)で、県内13市で唯一人口が増加しています

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top