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【書評】『膝エコーのすべて 解剖・診断・インターベンション』X線診断を基本とした従来の診療スタイルを根本から覆す一冊

No.4995 (2020年01月18日発行) P.66

皆川洋至 (城東整形外科副院長)

登録日: 2020-01-15

最終更新日: 2020-01-14

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氾濫する共著は読み捨てられる。デコボコしたパーツの中から一部が引き出され、読まれたのちゴミ箱行きとなる。一方、単著は著者自身が構成し、全てのパーツを書き上げる。世に出すには家庭の時間、余暇の時間、そして睡眠時間を書籍に捧げなければならない。共著に比べ、単著が極端に少ない理由である。人並み外れた情熱が込められた本には価値がある。だから捨てられない、捨てない、本棚行きとなる。

本書の特徴は、膨大な情報量、基礎から臨床までを俯瞰した内容構成、質の高い画像と分かり易い図である。随所に謙虚で勤勉な著者の人柄が現れる。

圧巻はおよそ100点におよぶ解剖写真。読み手のレベルで見え方が変わっても、解剖は真実しか語らない。これだけ数多くの解剖写真を掲載した書籍は珍しい。著者の豊富な解剖経験は、画像へのこだわりにも見て取れる。膝関節学を理解する手段として、本書には超音波画像以外にも数多くの画像を掲載している。X線写真(61)、CT(15)、MRI(130)、超音波画像(256)、その他解剖図など(181)。この数字が画像に対する著者の格付けを物語る。

本書は江戸中期(1774年)に出版された『解体新書』と酷似する。杉田玄白・前野良沢らの情熱が、当時の常識だった東洋医学から西洋医学へのパラダイムシフトを引き起こした。本書にもX線診断を基本とした従来の診療スタイルを根本から覆す威力がある。

これからの時代、X線所見だけで語る医師は嘘つきになる。痛い場所をX線撮影し、内服処方でお茶を濁すことに著者は警鐘を鳴らす。問診・視診・触診と同時に超音波画像を活用し、病態を正確に把握する。局所病態を超音波ガイド下に局所治療する。治療結果から病態を再考し、病態理解をさらに深める。これが新しい時代の診療スタイルである。

だからこそ本書は膝エコーの本“book”ではない。膝関節を学ぶバイブル“The book”である。

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