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【書評】トラブル対応のみならず、人工呼吸管理の原理原則をも知ることができる画期的な一冊

No.4967 (2019年07月06日発行) P.61

瀬尾龍太郎 (神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター医長)

登録日: 2019-07-03

最終更新日: 2019-07-02

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「人工呼吸の学習は本当に難しい」と感じている医療者は多い。人工呼吸器関連の本や雑誌の特集、セミナーなどが巷に溢れているのはその証拠である。勉強した時にはすごくわかった気になるのだが、臨床現場で活用できるようになったと実感できるようにはなかなかならない。それはなぜか。

教科書やセミナーで得た知識を活用できるものにするためには、(1)実際に活用する機会、(2)実践後の患者さんからのフィードバック、そして(3)原理原則の理解が重要である。こと人工呼吸管理に関しては、バリバリ集中治療室で働いていなければ、患者さんに活用する機会やフィードバックの頻度は必然的に少なくなる。そのため、(3)の原理原則の理解が重要である。学習してもしっくりこないと感じている場合は、なかなか原理原則までたどり着けていないのではないだろうか。

しかし、人間の体は非常に複雑であり、原理原則を知るためには、多くの場合非常に膨大な労力が必要である。しかし、そんな余裕はとてもない。なんとか近道はないのであろうか?
…ここに近道がある。

ポップな表紙に「人工呼吸器トラブルシューティングセミナー」という題名。手にとったこの本は、今まで田中竜馬先生が執筆された本の補助的なものかと勝手に想像していたが、その予測は大きく裏切られた。

この本には、人工呼吸管理のトラブルシューティングに関する情報が、網羅的に記述されている。トラブルが起こるメカニズムとその発見方法、トラブル発生時になすべき行動が、話しかけるように書かれている。豊富な挿絵やグラフィックも合わせて、初心者から熟練者まで、人工呼吸器のトラブルシューティングに関する情報のほとんどが習得できるだろう。

そして、この本が本当に秀逸なところはさらにもう1つある。この本を読むことで、人工呼吸管理に必要な肺メカニクスの原理原則が一気に手に入るのである。このコンパクトな本の中に、原理原則が可能な限り簡素化された形で提示されている。この本を読み、理解することで、今まで臨床現場で活用しきれていないと感じていた人工呼吸器に関する知識が生き生きと輝き始めるだろう。

人工呼吸管理の学習者、そして教育者には、ぜひ一度手にとって頂きたい一冊である。

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