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びまん性特発性骨増殖症(DISH)とはどのような疾患か?

No.4946 (2019年02月09日発行) P.58

田中真弘 (東海大学医学部外科学系整形外科学講師)

檜山明彦 (東海大学医学部外科学系整形外科学講師)

登録日: 2019-02-08

最終更新日: 2019-02-05

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上背部痛をきたす原因の1つとなる疾患としてびまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)があると聞きました。しかし,いわゆる変形性脊椎症とどのように異なるものなのかよくわかりません。どのような疾患かについて,ご解説をお願いします。

(熊本県 M)


【回答】

【前縦靱帯を中心に広範な脊椎強直をきたす】

DISHとは,前縦靱帯を中心に広範な脊椎強直をきたす疾患であり,その発症は高齢,肥満,糖尿病など生活習慣とも関連し,近年増加傾向にあります。

DISHは全身的な非炎症性疾患であり,その骨化形態は腱や靱帯,関節包が骨に接着するenthesisに発症することが特徴です。DISHの多くは50歳以上で発症し,女性よりも男性に多いとの報告が多く,人種間でも差があり,最も多いのは白人系で,アフリカ系米国人,Native American,アジア人ではその頻度が低かったと報告されています。

DISHの診断には,①石灰化または骨化を少なくとも4椎体で連続して認めること,②罹患領域で椎間板腔が比較的保持されていて,椎体辺縁の骨硬化などの椎間板変性を示唆する所見のないもの,③仙腸関節部での骨硬化や骨癒合などを認めないこと,のすべての条件を満たすことと定義されています。

一方で,変形性脊椎症とは脊椎の加齢性変化を主とした椎間板の狭小化や椎体の骨棘形成が原因となり,頸部痛や腰痛などの疼痛を呈した脊椎疾患の総称です。病変部位により変形性頸椎症(頸椎症),変形性胸椎症(胸椎症),変形性腰椎症(腰椎症)と表現します。

腰痛や上背部痛の原因としてDISHがあるかどうかに関してですが,DISHにより脊椎は不撓性を呈するが腰痛には影響を与えないと報告されており,DISHそのものが痛みを引き起こすことは現在証明されていないのが実情です。

ただし,DISHとの鑑別で強直性脊椎炎(anlylosong spondylitis:AS)という疾患があります。ASは自己免疫疾患による慢性進行性の炎症性疾患であり,主に体幹に近い四肢関節(特に肩関節,股関節),脊椎,仙腸関節を含みます。20歳代の男性に好発し,初発症状は背部の痛みと進行性の脊椎の可動性の減少です。画像所見としては,X線写真で,一側あるいは両側の仙腸関節炎,竹の節のように連続的に連なって変形し,癒合した脊椎(bamboo spine)が特徴的で,DISHと類似した画像所見を呈します。本疾患はDISHと異なり炎症性の疾患であることから,背部の痛みを引き起こすことが特徴です。

DISHにおいては,脊椎が骨強直により可撓性を失うことで,軽微な外力でも脊椎損傷をきたすことが知られています。DISHに合併した椎体骨折の保存治療では,遅発神経麻痺をきたす可能性もあることや,骨癒合が得られるまでに誤嚥性肺炎や認知症などの合併症をきたす可能性があることから,原則として手術治療(脊椎固定術)を行います。

【回答者】

田中真弘 東海大学医学部外科学系整形外科学講師

檜山明彦 東海大学医学部外科学系整形外科学講師

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