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ショパンの心臓の再調査結果は?【BBCが「結核結節はみられず慢性肺疾患による肥大あり」と報じたが,医学的報告はない】

No.4884 (2017年12月02日発行) P.65

早川 智 (日本大学医学部微生物学教授)

登録日: 2017-11-28

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  • 2014年4月14日,ワルシャワの聖十字架教会に安置されているショパンの心臓が約70年ぶりに専門家らによって再調査されました。心臓はクリスタルの壺に入っており,開けることなくおおむね保存状態は良好で,心臓は本物と確認された由(心臓に割が入っているかどうかは不明)。これは医学専門誌に報告・発表されていますか。

    (神奈川県 K)


    【回答】

    ご質問のショパン(Frédéric François Chopin,1810〜49)の心臓については,Pub MedやGoogle Scholarで検索した限りではこれを扱った医学論文はみつかりませんでした。

    欧州では12世紀から,十字軍遠征中に亡くなった王侯貴族の遺体を故国に運んで埋葬するために解体するMos Tetunicusという習慣がありました。特に腐敗しやすい内臓を取り出すとき,精神の宿る(と考えられてきた)心臓は特別扱いでした。この習慣によりフランスでは,18世紀まで国王の心臓を遺体とは別に壺に入れて保存する風習がありました1)。17世紀からはイエスの幻を見た修道女の伝説から聖心信仰が出現し,聖心修道院やサクレクール寺院が建立されています。カトリック信仰とは別に19世紀になっても革命家マラーや共和派の領袖ガンベッタの心臓が民間信仰の対象となっています。

    ショパンはポーランド出身ですが,後半生をフランスで過ごし,亡くなったときはフランスで最も人気のある作曲家・ピアノ演奏者でしたので,故国ポーランドの教会に国民的英雄として心臓を別に保存したのでしょう。わが国でも複数の墓所に分骨する習慣がありますが,同じ発想だと思います。

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