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多発性硬化症(MS)の診断指針と治療 【診断後速やかに疾患修飾薬(DMD)を導入し,モニタリングしながら治療する】

No.4845 (2017年03月04日発行) P.62

長尾毅彦 (日本医科大学多摩永山病院脳神経内科部長)

野原千洋子 (東京都保健医療公社荏原病院神経内科)

登録日: 2017-03-01

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  • 脳血管障害と鑑別が必要な重要な神経疾患として,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)があります。類縁疾患も含めた最新の診断指針と初期治療の考え方をご教示下さい。特に,初回発作で後遺症がほとんどない症例では治療を開始すべきか悩むところです。
    東京都保健医療公社荏原病院・野原千洋子先生にお願いします。

    【質問者】

    長尾毅彦 日本医科大学多摩永山病院脳神経内科部長


    【回答】

    MSは2000年以降,診断基準や治療薬が大きく進歩した神経疾患のひとつです。近年,その病態は脱髄のみでなく初期から軸索損傷をきたすことが報告され,脳容積減少率も健康人が0.1〜0.4%/年であるのに対しMS患者は0.5〜1%/年で,MS初期においても同様であることが報告されています。このため,MS患者ではQOLを低下させる高次脳機能障害が患者全体の40〜75%にみられ,身体症状のない患者にもみられることが知られています。すなわち,患者QOLを長期に良い状態に保つには,早期診断・早期治療が重要となります。

    これを反映し現在使われている2010年改訂版McDonald診断基準は早期診断を目的としたもので,特にそれが時間的・空間的再発のMRI基準に強くみられます。1回のMRI撮影でもその中に造影病巣とT2病巣の両方が含まれていれば時間的再発が証明でき,臨床初発時にMSと診断することが可能となりました。またベースラインのMRIと比較し再検したMRIでT2病巣または造影病巣を認めれば,臨床再発がなくても画像再発でMSと診断できるようになりました。ただし,この診断基準は脱髄疾患からスタートしており,その前に他疾患を除外しなければいけない点には注意が必要です。

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