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オリンピックは国別の対抗競争か? 【オリンピック憲章では否定されているが】

No.4840 (2017年01月28日発行) P.62

森 浩寿 (大東文化大学スポーツ・健康科学部 スポーツ科学科教授)

登録日: 2017-01-25

最終更新日: 2017-01-24

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  • 「オリンピック憲章」(2015年版)の第1章には,個人種目または団体種目は選手間の競争であり,国家間の競争ではないと記されています。以下について、教えて下さい。
    (1)団体種目でのチームは異なる国の選手の構成でもOKでしょうか。
    (2)いつ頃から団体種目が国どうしの競争になったのでしょうか。

    (質問者:埼玉県 I)


    【回答】

    現行の「オリンピック憲章」(2016年版)には,「オリンピック競技大会は,(中略)国家間の競争ではない」と記されています(憲章6)。実際には,メディアだけでなく国際オリンピック委員会(IOC)も,国別のメダル獲得ランキングを発表していますが,これはサービスの一環にすぎず,国どうしの争いというわけではありません。

    かつて,1936年のベルリンオリンピックで,ヒトラーがオリンピックを政治的に利用しようとしたことがありましたが,スポーツと選手を政治的に利用することも排除されています(憲章2)。国どうしの競争感が強かったのは,イデオロギーの対立が激しかった時代とも言えます。国威発揚のため,特に,いわゆる東側諸国が組織的にドーピングを行い,国家主導で強化していたと言われています。

    (1)団体種目でのチーム構成
    団体種目にはサッカーやバレーボールなどが該当しますが,個人種目であろうと団体種目であろうと,オリンピックに出場する競技者は「参加登録申請を行う国内オリンピック委員会(NOC)の国の国民でなければならない」と定められています(憲章41)。すなわち日本代表としてオリンピックに出場するには,日本オリンピック委員会(JOC)を経由してエントリーしますので(憲章40),日本国籍を持っていなければならず,異なる国の選手で構成されることはありません。

    国籍の要件は国によってまちまちですが,同時に複数の国籍を持つ競技者の場合は,「どの国を代表するのか,自身で決めることができる」と規定されています。ただし,オリンピック競技大会,大陸や地域の競技大会,関係国際競技連盟(IF)の公認する世界選手権大会や地域の選手権大会で1つの国の代表として参加した後には,別の国を代表することはできません(規則41付属細則1)。

    ところで,上記のように1つの国の代表として参加した後に国籍を変更した場合はどうなるかというと,「以前の国を最後に代表してから少なくとも3年が経過していること」を条件に,新しい国での参加が認められています。オリンピックに参加するための帰化ではないかと疑われる事例があることから,このようなルールが定められています。

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