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繁盛するコンビニエンスストアの立地条件は?【駐車場,車線方向による影響】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.62

木下安司 (法政大学ビジネススクールイノベーション・ マネジメント研究科兼任講師/中小企業診断士)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-12-16

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【Q】

コンビニエンスストアで,車での利用者が多い場合の,客が多く来るための立地条件は何ですか。信号との関係,駐車場の状態(トラックが多い場合は,駐車場も広めに取っているようですが),道路の道幅,などについてお教え下さい。 (兵庫県 K)

【A】

コンビニエンスストアの立地を,出店担当者(セブン─イレブンでは“リクルート”と呼んでいます)の視点から考察します。出店担当者が重視する視点は,次の3点です。これはあくまでセオリーであり,これら以外の立地条件も加味して,総合的に出店の可否を判断します。
(1)視認性:遠くから店が見えるかどうかです。特に郊外店の場合は,車で来店する顧客の割合が高く,視認性の高い店ほど顧客の来店確率が高くなります。したがって,遠くから店を認識させるサインポールや置き看板が重要になってきます。
(2)進入の容易性:駐車場に入りやすいかどうかです。視認性が高くても,車の進入路が狭くて入りにくく,出ていく車を待たなければならないような進入路の狭い店は,客は来店をあきらめてしまいます。
(3)退店の容易性:駐車場から出やすいかどうかです。入店しても,退店しにくい店は嫌われます。したがって,交差点の手前よりは先のほうが,信号が赤に変わって通行量が少なくなったときに出やすいため,有利です。
次に,車利用を前提とした一般的な立地条件の適否を見ていきましょう。
[1]車利用を前提とした好立地条件
一般的に車利用を前提とした場合,コンビニエンスストアの好立地条件を挙げると,次のようになります。
(1)「上り」車線より「下り」車線:急を要しない場合,客は行きよりも帰りに買い物をしようと考えます。もちろん,「上り」より「下り」のほうがいつも渋滞している場合は,例外となります。
(2)移動スピードがゆるむ地点:移動スピードがゆるむ地点は,進入がしやすいものです。車がトップスピードで走っている道路は,店への進入が不可能ではありませんが,心理的な圧迫感が働き,敬遠されます。さらに,車がトップスピードで走っている道路は,退店もしにくいものです。
(3)交差点を渡った先:交差点の手前よりは,交差点を渡った先のほうが有利です。なぜなら,交差点の手前の信号は,渋滞が発生しやすいからです。入るのはともかく,出るのが大変です。
(4)坂道の途中より頂上:坂道の頂上付近が有利です。坂道の途中は車を停めにくく,坂道発進はやりにくいものです。
[2]車利用を前提とした避けたい立地条件
一方,車利用を前提とした場合の避けたい条件を挙げると,次のようになります。
(1)平均速度が速すぎる道路:好立地条件(2)の逆です。
(2)交通量が多すぎる道路:適度な交通量は必要ですが,交通量が多すぎると,来店も退店もしづらいものです。
(3)中央分離帯の反対車線:中央分離帯は,物理的なバリアになってしまいます。客は,先まで行ってUターンしなければならない場合,よほどのことがない限り来店してくれません。
(4)道路から駐車場が見えにくい:駐車場が店の裏側に広がっている,または街路樹で駐車場が見えないような立地は,車の利用客にとっては不利です。
(5)夕方渋滞する道路,朝方渋滞する道路:どちらをとるかは,ほかの条件との勘案になります。
[3]駐車場との関係
駐車場の面積と売上高には,明らかな正の相関関係があります。駐車場が広い店ほど,1日の平均売上高(日販)は高くなります。特に大型トラックが駐車できる店は,客単価も高くなり,有利です。
普通車の駐車スペースは最低でも1台30m2は必要と言われ,10台の駐車場を確保するためには,最低でも駐車スペースは300m2必要になります。
大型車の駐車スペースを取る場合は,普通車との区分けのため,駐車場をT字で区切るなどの工夫が必要になってきます。

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