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パーキンソン病での画像診断の位置づけ・臨床的意義【臨床型の判断・診断精度・病態の説明に有効】

No.4810 (2016年07月02日発行) P.54

平野成樹 (千葉大学大学院医学研究院神経内科学講師)

登録日: 2016-07-02

最終更新日: 2016-12-16

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【Q】

最近のパーキンソン病診療における画像診断の位置づけと臨床的意義について,千葉大学・平野成樹先生のご解説をお願いします。
【質問者】
斎木英資:田附興風会医学研究所北野病院神経内科 副部長

【A】

パーキンソン病では,機能画像を用いた診断や病態解析研究がますます盛んになってきています。まず頭部CTやMRIでは,パーキンソン病は正常所見ですが,その他のパーキンソン症候群では異常がみられることが多々ありますので,パーキンソン病以外の疾患の除外に用います。
ドパミントランスポーター画像では,パーキンソン病,レビー小体型認知症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症などといった黒質線条体ドパミン神経の脱落がみられる疾患において,線条体での異常低下所見を認めます。原因不明の振戦,ジストニアなどの不随意運動や薬剤性パーキンソニズム,アルツハイマー病などとの鑑別に有用です。また,ドパミン神経活動の強さは臨床症状とある程度相関することから,重症度の判定や経過観察などの臨床研究にも有用な可能性があります。
MIBG心筋シンチグラフィー検査は心臓での交感神経の活動を反映し,パーキンソン病,レビー小体型認知症,純粋自律神経不全症,レム睡眠行動障害で低下し,その他のパーキンソン症候群では一般的には低下しません。すなわち,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症,血管性パーキンソニズムなど多くのパーキンソン症候群では正常所見であるため,これらの鑑別に有用です。また,脳血流画像は血流低下部位や代償的増加部位が疾患によって違うので,そのパターンは診断に有用です。それぞれの画像検査において,感度,特異度とも8~9割に達することがわかっていますが,裏を返せば,個人の症例からみると,1~2割は誤った所見が得られてしまうということです。
以上をまとめると,画像が特に有用と思われるポイントは3点あると考えます。
第一にパーキンソン病には多様な症状があり,いくつかの臨床型が潜在していると想定されています。画像所見を基準にして,あるいは特定の画像所見を組み入れて分類していくことによって,今後新たな臨床的知見が得られる可能性があります。
第二として,パーキンソン病は病理学的な診断を最終診断とするならば,専門家であってもある程度の確率で誤診する可能性があると言われています。つまり,臨床医としては画像診断の結果を足がかりにして診断精度を上げるとともに,反対に予想外の結果であった際には誤診を含めた慎重な経過観察が必要であると考えます。画像検査は完璧な診断ツールではありませんが,背景に存在する病態病理を反映しているので,治療方針を決定する必要がある臨床医にとっては良い水先案内人であると考えます。今後,画像と病理との相関が明らかにされていけば,将来は画像検査単独で,より確実なことが言えるようになることが期待されます。
第三には,神経難病の病状説明は,専門家以外の医療従事者や医学生,パーキンソン病の人々,その介護者にとって難解になりがちです。画像検査は目で見てわかることから,病態の説明において役に立ちます。

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