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乳幼児突然死症候群の発症には覚醒反応不全が関与する  【覚醒反応不全の発症予防には胎児期・周産期の管理が重要】

No.4802 (2016年05月07日発行) P.57

小谷泰一 (京都大学法医学准教授)

登録日: 2016-05-07

最終更新日: 2016-10-26

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うつ伏せ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険因子である。しかし,うつ伏せ寝をした乳児が全員SIDSを発症するわけではない。最近,SIDSに至る乳児は,「覚醒反応不全」と呼ばれる低酸素血症に対する脆弱性を有することがわかってきた(文献1)。
SIDSは生後2~4カ月頃に好発する。この時期の乳児は首すわりが不十分であるが,うつ伏せ寝で低酸素血症に陥ると,通常,その危機を察知して眠りが浅くなり,自ら頭を持ち上げたり,横を向いたりする。一方,SIDSに至る乳児の場合は,低酸素血症でも覚醒反応が正常に機能しないため,回避行動をとれずに呼吸停止に至る。うつ伏せ寝のほか,布団での被覆,過剰な暖房,感染症,睡眠不足などでも,覚醒反応不全があるとSIDSを発症する。
覚醒反応不全の発症には母の喫煙や薬物濫用,低出生体重児などが関係しているので,SIDSの予防には胎児期や周産期の管理が重要である。この覚醒反応不全をきたす原因を解明し,発症予測マーカーが開発されれば,SIDS発症リスクの高い乳児の早期発見,そして発症予防につながる。昨今,脳幹部でのセロトニントランスポーター異常や海馬歯状回の形態異常が報告されるようになった。今後の研究成果が待たれる。

【文献】


1) Thach BT:Compr Physiol. 2015;5(3):1061-8.

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