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高齢者の入浴中の死亡:溺死の場合,明確な死因を判断できない場合[〈今日使える〉死亡診断書・死体検案書の書き方・考え方〜当直・在宅・事故(7)]

No.5281 (2025年07月12日発行) P.28

監修: 久保真一 (福岡大学名誉教授)

執筆: 木下博之 (科学警察研究所所長)

登録日: 2025-07-15

最終更新日: 2025-07-09

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【症例】

78歳,男性。独居。週2回来訪しているヘルパーが,本日,予定通りに自宅を訪問したところ,応答がなかった。心配になったヘルパーからの通報で,警察官立ち会いのもと,鍵を壊して室内に入り確認したところ,浴槽内で顔を水につけた状態で死亡しているのを発見された。救急隊が到着したときには,既に死後硬直が出現しており,病院には搬送されなかった。

冬場に風邪を引いて病院を受診していたが,それ以外には,定期的な通院を行っていない。死者は喫煙者で,1日10本ほどのたばこを吸っている。飲酒習慣はない。3日前にヘルパーが来訪した際には,特に異常はなかった。発見前日までの新聞は取り込まれており,発見当日の新聞は郵便受けに残されていた。また,発見前日の午後3時すぎに買い物をした際のレシートが,室内に残っていた。

警察署で検視が行われ,その際に立ち会いと死体検案を求められた。全身の関節の死後硬直は軽度で,外表に明らかな損傷はなく,脳脊髄液は透明であった。鼻腔,口腔内には白色の泡沫がみられた。検視時に採取した血液の一酸化炭素ヘモグロビン飽和度は3.2%,直腸内温度は32℃であった。湯温は不明であるが,給湯器は42℃に設定されていた。なお,給湯器自体は屋外に設置されている。死亡時刻は,発見前日の午後9時頃と推定された。その後の警察の捜査でも,特に不審な点はみられなかった。

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