株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

農薬摂取後の死亡事例:病院で治療を受けていた場合[〈今日使える〉死亡診断書・死体検案書の書き方・考え方〜当直・在宅・事故(8)]

No.5282 (2025年07月19日発行) P.34

監修: 久保真一 (福岡大学名誉教授)

執筆: 木下博之 (科学警察研究所所長)

登録日: 2025-07-21

最終更新日: 2025-07-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【症例】

68歳,男性。高血圧にて近医から降圧薬の処方を受けている。そのほかに疾患はない。また肝機能障害も指摘されていない。本日午後3時頃,自宅居間で口から泡を吹いて意識がない状態で倒れているのを,外出から帰宅した家族が発見した。家族が救急車を要請し,病院に搬送された。病院到着時には,著明な縮瞳(1.5mm),流涎,下痢様の多量の脱糞がみられた。また胃内容を吸引した際に,有機溶媒臭を感じた。血液検査を行ったところ,血清コリンエステラーゼ値が71U/L(基準値240~480U/L)と著明に低下しており,有機リン系農薬中毒が疑われた。治療を受けたが発見翌日の午前2時52分に死亡した。警察に届出が行われ,自宅の納屋から有機リン系農薬(フェニトロチオン)の容器が見つかった。また死者の机の引き出しから遺書も発見された。

なお,血液および尿から,納屋から発見された有機リン系農薬の成分が検出された。

プレミアム会員向けコンテンツです(連載の第1~3回と最新回のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top