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職場における腰痛の予防

No.4775 (2015年10月31日発行) P.58

堀江正知 (産業医科大学産業保健管理学教授)

登録日: 2015-10-31

最終更新日: 2016-10-26

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腰痛は,休業4日以上の業務上疾病の6割を占め,近年,保健衛生業で増加している。その99%は急激な外力によるもので,災害性腰痛と呼ばれる。一方,非災害性腰痛には中腰で重量物20kg以上の継続運搬に3カ月以上従事するなどの認定要件があり,事例は少ない。
職場のリスクには,手作業,重量物挙上,中腰・捻り姿勢,拘束姿勢,急な動作,振動,寒冷,薄暗さ,床面の段差・滑りやすさ・転倒しやすさ,などが指摘されてきたが,近年,長時間労働や対人トラブル・仕事への不満・周囲の支援不足といった心理的ストレスの重要性が強調されている(文献1)。個人のリスクには,加齢,肥満,筋力低下,椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症,骨粗鬆症などのほか,腰痛や抑うつの既往も挙げられている。
『腰痛診療ガイドライン』(日本整形外科学会,2012)では,腰痛の約85%を占める非特異的腰痛の予防に,腹筋・背筋の増強やストレッチングなどの運動療法のほか,慢性化の予防として,発症後の活動性維持や認知行動療法を推奨している。職場での取り扱い重量の制限は,女性労働基準規則では成人女性の断続作業で30kg以下,継続作業で20kg以下と規定している。また,行政指針では,男性では体重の40%以下,女性ではさらにその60%以下を推奨している(文献2)。米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は,重量物を保持する高さ・身体からの水平距離で12分割し,作業頻度に応じて推奨重量を勧告している。

【文献】


1) Matsudaira K, et al:PLoS One. 2014;9(4):e93924.
2) 厚生労働省労働基準局長:職場における腰痛予防対策の推進について. 基発0618第1号, 2013年6月18日.

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