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AKIの診療ガイドラインの変遷

No.4751 (2015年05月16日発行) P.51

三島史朗 (東京医科大学救急・災害医学教授)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-26

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急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は,かつて急性腎不全として扱われた,腎機能の急性廃絶に対する今日的名称である。腎臓の終末像としての機能不全ではなく,早期からのリスクの監視と,治療と予防のためにつくられた。その国際的診断基準が,2002年に発表されたRIFLE(risk,injury,failure,loss,end-stage)分類で,7日以内の糸球体濾過率低下または血清クレアチニンの上昇と,時間尿量減少で診断する。2005年にacute kidney injury network(AKIN)によって改訂された。この分類ではAKIを48時間以内に進行する急速な腎機能低下と定義している。測定頻度の低い糸球体濾過率を外して,血清クレアチニンを48時間以内に2回以上測定し,50%以上または0.3mg/dL以上の上昇で診断する。
2012年にAKIN基準を改訂したのがKidney Dis-ease Improving Global Outcomes(KDIGO)である。KDIGO基準は,RIFLE分類とAKIN基準のいいとこ取りで,血清クレアチニン上昇が0.3mg/dL以上は48時間以内,50%以上の増加は7日以内をエントリークライテリアとしている。KDIGO(文献1)はこの診断基準をもとにAKIの診療ガイドラインを策定した。AKIの治療は,腎毒性物質を可能な限り中止し,体液量と灌流圧を維持することが基本となる。そのためには等張性晶質液の輸液を行う。血管作動性ショックには,昇圧薬で循環の安定化を図る。腎血流量を増やす目的の低用量ドパミンは勧められず,心房性Na利尿ペプチドや,腎機能改善目的での利尿薬も推奨されない。統一的な診療ガイドラインに基づくAKIの予後改善が期待されている。

【文献】


1) Kellum JA, et al:Crit Care. 2013;17(1):204.

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