気道損傷(吸入損傷)とは高温の煤煙,水蒸気,有毒ガスなどの吸入により受傷する呼吸器系の障害である。従来は「気道熱傷」と呼ばれていたが,その病態は熱による損傷に限らず,煤煙などに含まれる有害物質による化学損傷も含まれることなどから,日本熱傷学会では「気道損傷」(inhalation injury)を用いることを勧めている。
気道損傷では,局所治療よりもむしろ気道確保や人工呼吸管理などの集中治療が必要となる。また,高率に合併する一酸化炭素中毒にも注意する。
「閉鎖空間での火災」という受傷機転が重要である。屋外での火災よりも気道損傷のリスクが高くなる。また,「呼吸困難感や喉が詰まった感じ」という主訴をクローズドクエスチョンで質問することも有効である。
局所所見として口腔・咽頭内すす付着,嗄声,ラ音聴取が重要である。気道損傷によるバイタルサインの異常は頻呼吸やSpO2の低下であるが,これらを認めなくても気道損傷の否定にはならない。特にSpO2は,気道閉塞が進行するまでは維持されるので注意を要する。
これらの所見から上気道の粘膜浮腫による窒息リスクをいかに見出すかが,身体診察のポイントである。また,有害物質による下気道以下の障害から生じる肺水腫にも注意する。
残り999文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する