血尿は,腎臓から尿道までの経路において,どこかで出血をきたした病態,あるいは播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)など,全身性の出血傾向による一症状として尿中に出血が発現した病態である。まずはバイタルサイン,中でも循環不全徴候の有無の判断とショックへの初期対応が重要である。
大量の血腫による尿閉や膀胱タンポナーデなど,尿路の閉塞症状の有無を評価し,泌尿器科的緊急処置の要否を判断する。全身性の出血傾向に合併する血尿では,原疾患の治療とともに,適切な輸血製剤の投与が重要である。
救急外来で遭遇する血尿症例は,肉眼的血尿を主訴とするものか,あるいは導尿時に偶発的に認められた肉眼的血尿である。出血部位により,腎前性,腎性,腎後性に分類される。頻度の高い腎後性では,尿管,膀胱,前立腺,外性器などが出血部位となる。これらの泌尿生殖器経路を想起しながら,出血部位の同定につながる情報収集を心がける。
まずは血尿の誘因となる病歴の聴取が重要である。激しい運動や労働,転倒,腹部~腰背部の外傷,さらには性交や性器に対する異物使用の有無など,泌尿生殖器への外傷につながる可能性がある病歴について詳細に問診する。
一方,内因性では,腎後性血尿の原因となる尿路結石,尿路感染症,前立腺肥大などが救急外来では比較的高頻度にみられ,稀に膀胱・尿路系腫瘍がある。また,腎性血尿の原因となる糸球体腎炎,腎盂腎炎,腎腫瘍なども鑑別疾患に挙がる。したがって,これら内因性疾患を裏づける病歴の聴取が重要であり,発熱,腰背部痛,排尿時痛,頻尿,排尿困難など,基本的徴候の有無を確実に聴取する。加えて,抗血小板薬や抗凝固薬,出血性膀胱炎を惹起する抗癌剤などの内服状況を確認する。
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