無尿・乏尿では急性腎障害(acute kidney injury:AKI)を疑う。AKIの原因は腎前性,腎性,腎後性に分類されるが,まずは腎後性および腎前性を鑑別し,原因に応じた治療を行う。排尿障害では尿閉の頻度が高く,その解除と誘因に対する治療を行う。AKIの代表的な原因を以下に挙げる。
・腎前性:循環血漿量減少(脱水,出血,利尿薬),ショック(敗血症性,心原性等),薬剤(NSAIDs,カルシニューリン阻害薬,ACE阻害薬,ARB)
・腎性:糸球体疾患(急性糸球体腎炎,溶血性尿毒症症候群,血栓性血小板減少性紫斑症など),急性尿細管壊死(腎虚血:低血圧や敗血症等の腎前性の要因と関連),横紋筋融解,薬剤(バンコマイシン,アミノグリコシド系抗菌薬,シスプラチン,造影剤等),急性間質性腎炎(βラクタム系等の抗菌薬,利尿薬,抗てんかん薬,アロプリノール,サルコイドーシス,シェーグレン症候群)
・腎後性:前立腺疾患,骨盤・後腹膜悪性腫瘍,神経因性膀胱,両側尿管結石
強い尿意はあるものの尿が出ない場合,「尿閉」を疑う。尿閉の誘因としてアルコールや薬剤歴を聴取する。血尿+尿閉では「膀胱タンポナーデ」に,外傷+尿閉では「脊髄損傷」に注意する。
尿が産生されない・少ない場合は,「無尿・乏尿」を疑う。前述したAKIの原因を念頭に,随伴症状や薬剤歴を聴取する。
頻尿,残尿感,排尿時痛は「膀胱炎」などの下部尿路感染症を,発熱,腰痛が加われば「腎盂腎炎」を示唆する。性感染症を念頭にsexual activityも聴取する。血尿,体重減少では「悪性腫瘍(膀胱癌,腎癌,前立腺癌)」を鑑別疾患に挙げる。
残り1,546文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する