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痛みが主症状である脊椎すべり症への対応【診断的神経ブロックや薬物療法・運動療法で対処する】

No.4794 (2016年03月12日発行) P.56

伊達 久 (仙台ペインクリニック院長)

登録日: 2016-03-12

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

脊椎すべり症では,単純X線におけるMeyerdingの分類,MRIにおける硬膜管の観察において,すべりの程度や狭窄が比較的軽微であるにもかかわらず執拗に痛みを訴える例が存在します。患者がまだ生産年齢で筋力低下や膀胱直腸障害などの脱落症状がなく,痛みが主症状である場合,早急に手術を勧めることにも,延々と神経ブロックやオピオイド,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを投薬し続けることにも抵抗を感じるのですが,その対応について,仙台ペインクリニック・伊達 久先生のご回答をお願いします。
【質問者】
長沼芳和:長沼ペインクリニック院長

【A】

脊椎すべり症で腰下肢痛などの症状がみられるのは10%前後である,という報告があります。しかし,すべりの程度が軽度で脊柱管狭窄などがあまりみられない症例でも,執拗に痛みを訴える患者がいることも事実です。
脊椎すべり症で痛みを訴える症例でも,腰痛だけの場合も下肢痛も訴える場合もあり,それぞれに対応が違ってくると思われます。腰痛だけの場合は主に椎間関節が痛みの原因になっていると思われますが,下肢痛を伴う場合は,神経根症状がある場合が多いと思われます。他院で延々とNS
AIDsを投与されているにもかかわらず痛みが取れない場合は,まず痛みの原因を特定する意味でも診断的神経ブロック(椎間関節ブロックや神経根ブロック)を行うことにしています。椎間関節が問題である場合は,脊髄後枝内側枝高周波熱凝固を行うことで,ある程度長期間の効果はみられると思います。また,神経根ブロックが有効な場合は,高周波パルス刺激を用いた神経根ブロックを行うこともあります。
これらによっても長期の鎮痛が得られない場合は,薬物療法を考慮しますが,同時に理学療法士による運動療法(リハビリテーション)を併用します。すべり症の場合は,背筋の筋力低下を伴っていることが多く,これらを改善することで徐々に軽快することがあります。
運動療法は,直接の施術よりも,自宅などで行う腰痛体操指導が中心です。普段から行ってもらうことにより症状が軽快するだけでなく,再発予防にもつながります。理学療法士がいない場合はパンフレットなどによる腰痛体操を行ってもらったり,水中歩行を勧めたりしています。腰痛体操は,痛みが強い場合には筋肉トレーニングのような負荷の強いものは避けて,ストレッチなどの軽い運動(血流改善目的)にします。
また,水中歩行は当初は短時間から始めて徐々に時間を増やしていくことが重要です。水中では浮力のためにスムーズに動けますが,水から上がると身体が重く感じられるため,初めは5分水中歩行したら,5分プールサイドで休み,トータルでも15~20分ほどの水中ウォーキングにとどめます。頻度も週2回程度にして,連日行わないように指導します。同じ時間の水中ウォーキングを数回行っても,翌日に筋肉痛などがみられない場合は,徐々にプールの中に入る時間を長くしていきます。
このようにして,水中歩行や腰痛体操を継続的に行うことにより薬物療法を徐々に少なくし,離脱することができます。また,自己効力感(self-efficacy)を養うこともでき,痛みのセルフコントロールにつながります。

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