世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本において,在宅医療という分野が創造されつつある。この稿では地域包括ケアシステム,介護保険,在宅医療について述べたい。
地域包括ケアシステムは中学校区を念頭に,おおむね30分以内に駆けつけられる日常生活圏域において,医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制のことである。
2011年度の介護保険法改正では,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,要介護状態となることの予防または要介護状態等の軽減もしくは悪化の防止のための医療および居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない(介護保険法第5条3),の条文が加えられた1)。
地域包括ケアシステムは2011年以降,各区市町村の介護保険計画の中に組み入れられていく。介護保険法第2条2には,「保険給付は,要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに,医療との連携に十分配慮して行われなければならない」(A.介護予防と重度化防止),3には「被保険者の心身の状況,その置かれている環境等に応じて,被保険者の選択に基づき,適切な保健医療サービス及び福祉サービスが,多様な事業者又は施設から,総合的かつ効果的に提供されるよう配慮して行われなければならない」(B.適切なサービス),4には「被保険者が要介護状態となった場合においても,可能な限り,その居宅において,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない」(C.居宅における日常生活),と記されている。被保険者の選択は現在のACP(アドバンス・ケア・プランニング)につながり,医療,介護との連携も明示されている。「A.介護予防と重度化防止」とはリハビリテーションの重視であり,在宅医療にとって重要な視点である。地域包括ケアシステムへの流れは必然であった2)。
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